6年前の5月初め、第一次安倍内閣のころ、まだ「消えた年金」問題も「事務所経費」問題もマスコミでは大きくはとり挙げられていなかった。現役農水大臣の自殺もまだなかった。
 5月に入ってから、間違いなく7月参院選挙を見越して、「左翼」マスコミは、安倍晋三・自民党に不利になるような報道をし続けた。当時の雰囲気をまだ憶えているが、産経新聞が「何たる選挙戦」と銘打つ連載をするほどの<謀略的>な報道が朝日新聞を筆頭になされた(産経新聞記者の中にも山本雄史のように、選挙後に、自社の報道姿勢に疑問を示し、明らかに当時の主流派マスコミの影響を受けた記者ブログを書いていた者もいた)。
 現時点において、朝日系のマスメディアは何とか安倍晋三又は安倍内閣の問題点を必死に探しているように見える。そして、国内や外交にかかる新内閣の新しい政策運営も、できるだけ<褒めない>・<粗探しをする>、あるいはまだ結果は分からないと<冷笑する>といった姿勢・感覚で対応しているようだ(報道ステ-ションもそういう観点から観る面白い)。

 もとより朝日新聞は「護憲」派・憲法9条2項削除大反対派の代表だが、この憲法問題、正確には安倍・自民党がとりあえず提唱している現憲法96条・憲法改正条項の改正の是非に焦点をあてて、来る参議院選挙の争点化し、この点を強調して少なくとも自民党等の「右派」勢力の伸張を阻止する、という「政治」運動方針を固めたかに見える。もとより、別途のスキャンダル探しは執拗になされると思われるが、この憲法改正条項改正問題に適切に対応しないと、6年前と同様に朝日新聞らの「左翼」マスメディアの<謀略>に負けてしまう怖れなしとしない、という恐さがある。
 朝日新聞の5/3社説「憲法を考える/変えていいこと、悪いこと」は誤り・デマに満ちており、朝日新聞の<謀略的>情報戦略の重要な一つだと思われる。
 あまりにヒドいものなのだが、憲法問題をよく知らない読者を<騙す(ダマす)>可能性が十分にある。以下、しごく当然のことを書いて、ウソ・デマの存在を指摘しておく。
 第一。①冒頭に「国民主権や基本的人権の尊重、平和主義など」は憲法上の「決して変えてはならない」もので、これらの「普遍の原理は守り続けなければならない」、とある。②途中の4段目に同趣旨で、基本的人権の保障のほか「国民主権と平和主義を加えた『三つの原理』の根幹は、改正手続によっても変えられないというのが学界の多数説だ」、ともある。
 朝日新聞の社説子よ、バカも休み休み言いたまえ。

 1.「平和主義」の定義または説明がない。具体的に現憲法のどの条項に表現されているのかをおそらくは意識的に曖昧にしている。

 2.そしてまるで安倍晋三・自民党らの改憲派が「平和主義」を<変えよう>としているかのごとき印象を与えようとしているようだが、そのための正確なまたは実証的な根拠の提示・説明はどこにもない。自民党憲法改正案は現9条1項は現行のままそのまま残そうとしているのであり、そのかぎりで、十分になお「平和主義」を遵守している。改憲派が「平和主義」を壊そうとしている、というのは悪質なデマだ。
 3.そもそもが現憲法の「原理」を上記の三つに整理するというまとめ方自体が決して「学界の多数説」ではないし(そのように単純に書いている樋口陽一の概説書もあるが、彼の著作のすべてに見られるわけでもない)、ましてこの三原理は改正できないというのは(「平和主義」の具体的意味内容を明確にしていない重大な欠陥があることは上記のとおりだが、それを別としても)「学界の多数説」では決してない。これら二点ともにこの欄でかつてかなり詳しく言及したことがある。9条1項だけではなく9条2項もまた「変えてはいけない」、すなわち憲法改正権の限界の一つだとする学説は一部にあるのはたしかだが、決して通説または多数説ではない。朝日新聞社説子は憲法学研究者なのか、そうでなければ一体誰の本を読んで、上のような
「デマ」を平気で堂々と書いているのだろう。
 第二。途中に、「自民党などの改正論」は現96条の「3分の2」を「過半数」に引き下げようというものだが、「これでは一般の法改正と同様に発議でき、権力の歯止めの用をなさない」、とある。
 朝日新聞の社説子よ、バカも休み休み言いたまえ。
 96条が要求している国会議員の「3分の2」以上は国民に対する<発議>の要件であり、(天皇の公布行為を別にすれば)国民投票による国民の「過半数」の承認によって初めて憲法改正が成立する。
 これに対して「一般の法〔法律〕改正」の場合は国会議員の「過半数」のいわば承認だけで「一般の法〔法律〕」として成立してしまう。法律制定や改正の場合は国民投票は必要がない。
 このような重要な決定的な違いをおそらくは意識的に曖昧にしたまま、憲法を法律と同じように扱うものだ、という批判を96条改正派に対して加えているわけで、容易に知りうる違いを無視した、悪質なデマだ。
 なお、付け加えれば、一般的な法律の場合は各議院議員の「出席議員」の過半数の賛成で成立するが、96条による憲法改正「発議」の場合は各議院の「総議員」数が母数になる。
 こんな違いは簡単に分かるものだ。にもかかわらず、朝日新聞社説子は、完全に無視して、改正派は<憲法を法律なみに引き下げようとしている>と論難している。これを<デマ>と言わずして何と言おうか。
 朝日新聞が「政治」結社に他ならないことはとっくに分かっている。そうであったとしても、デマによらず、もう少しはまともな議論をしたらどうか。
 なお、ついでに、朝日新聞5/3の第一面の「座標軸」は欧州では国家「主権」の一部を欧州連合に譲渡しようとしているのに、国家「主権」になおこだわる日本は遅れている、といった趣旨の「論説主幹・大野博人」の文章がある(匿名でない点は「社説」よりはよい)。これは欧州と東アジアの歴史的経緯や文化的背景の差異を無視した謬論だ。
 もともと「国家(主権)」を軽視したい「左翼」朝日新聞論説委員ならではの記述とも言えるが、<自主憲法なくして真の主権回復はない>とする改憲派の主張を批判または揶揄するために欧州の例を持ち出すのは、スジが悪い、あるいは的外れだ。
 以上で今回は終えるが、朝日新聞を筆頭とする「左翼」=親コミュニズム(だからこそ親中国でもある)の、日本を(<右傾化>ではなく)「正常化」、「健全化」しようとする勢力・人々に対する<謀略的>攻撃・<デマ宣伝>にはくれぐれも用心しなければならない。6年前のことを決して忘れてはならない。