秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

国旗

0788/資料・史料-2006.12.25朝日新聞・若宮啓文<風考計>コラム。

 資料・史料-2006.12.25朝日新聞・若宮啓文<風考計>コラム
 平成18年12月25日

 
//言論の覚悟 ナショナリズムの道具ではない
 教育基本法に「愛国心」が盛り込まれ、防衛庁が「省」になることも決まった日の夜だった。
 「キミには愛国心がないね」学校の先生にそうしかられて、落第する夢を見た。
 いわく、首相の靖国神社参拝に反対し、中国や韓国に味方したな。
 卒業式で国旗掲揚や国歌斉唱に従わなかった教職員の処分を「やりすぎ」だと言って、かばったではないか。
 政府が応援するイラク戦争に反対し続け、自衛隊派遣にも異を唱えて隊員の動揺を誘うとは何事か。
 自衛隊官舎に反戦ビラを配った者が75日間も勾留(こうりゅう)されたのだから、よからぬ記事を全国に配った罪はもっと大きいぞ、とも言われた。「そんなばかな」と声を上げて目が覚めた。
 月に一度のこのコラムを書いて3年半。41回目の今日でひとまず店じまいとしたいのだが、思えばこの間、社説ともども、小泉前首相や安倍首相らに失礼を書き連ねた。夢でよかったが、世が世なら落第どころか逮捕もされていただろう。
    ◇
 「戦争絶滅受合(うけあい)法案」というのを聞いたことがあるだろうか。
 条文を要約すれば、戦争の開始から10時間以内に、国家の元首(君主か大統領かを問わない)、その親族、首相や閣僚、国会議員らを「最下級の兵卒として召集し、出来るだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わしむべし」というものだ。
 いまならまずブッシュ大統領に読んでもらいたいが、長谷川如是閑(にょぜかん)がこの法案を雑誌『我等(われら)』で書いたのは1929年のこと。第1次世界大戦からしばらくたち、再び世界がキナ臭くなり始めたころである。
 デンマークの陸軍大将が起草して各国に配ったという触れ込みだったが、それはカムフラージュの作り話。「元首」と「君主」は伏せ字にしてきわどく検閲をパスした。
 それより11年前、日本のシベリア出兵や米騒動をめぐって寺内正毅内閣と激しく対決した大阪朝日新聞は、しばしば「発売禁止」の処分を受けた。さらに政府糾弾の集会を報じたところ、記事にあった「白虹(はっこう)日を貫けり」の表現が皇室の尊厳を冒すとして筆者らが起訴され、新聞は廃刊の瀬戸際に立たされた。ついに大阪朝日は村山龍平社長らが辞職して謝罪し、政府に屈することになる。
 これが「白虹事件」である。かつて「天声人語」の筆者でもあった如是閑は、このとき大阪朝日の社会部長だった。言論の敗北に無念を抱きつつ退社して『我等』を創刊したのだ。
    ◇
 こんな古い話を持ち出したのも、いま「言論の自由」のありがたみをつくづく思うからにほかならない。現代の世界でも「発禁」や「ジャーナリスト殺害」のニュースが珍しくない。
 しかし、では日本の言論はいま本当に自由なのか。そこには怪しい現実も横たわる。
 靖国参拝に反対した経済人や天皇発言を報じた新聞社が、火炎ビンで脅かされる。加藤紘一氏に至っては実家が放火されてしまった。言論の封圧をねらう卑劣な脅しである。
 気に入らない言論に、一方的な非難や罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせる風潮もある。それにいたたまれず、つい発言を控える人々は少なくない。この国にも言論の「不自由」は漂っている。
 私はといえば、ある「夢想」が標的になった。竹島をめぐって日韓の争いが再燃していた折、このコラムで「いっそのこと島を韓国に譲ってしまったら、と夢想する」と書いた(05年3月27日)。島を「友情島」と呼ぶこととし、日韓新時代のシンボルにできないか、と夢見てのことである。
 だが、領土を譲るなどとは夢にも口にすべきでない。一部の雑誌やインターネット、街宣車のスピーカーなどでそう言われ、「国賊」「売国」「腹を切れ」などの言葉を浴びた。
 もとより波紋は覚悟の夢想だから批判はあって当然だが、「砂の一粒まで絶対に譲れないのが領土主権というもの」などと言われると疑問がわく。では100年ほど前、力ずくで日本に併合された韓国の主権はどうなのか。小さな無人島と違い、一つの国がのみ込まれた主権の問題はどうなのか。
    ◇
 実は、私の夢想には陰の意図もあった。日本とはこんな言論も許される多様性の社会だと、韓国の人々に示したかったのだ。実際、記事には国内から多くの共感や激励も寄せられ、決して非難一色ではなかった。
 韓国ではこうはいかない。論争好きなこの国も、こと独島(竹島)となると一つになって燃えるからだ。
 そう思っていたら、最近、発想の軟らかな若手学者が出てきた。東大助教授の玄大松(ヒョン・デソン)氏は『領土ナショナリズムの誕生』(ミネルヴァ書房)で竹島をめぐる韓国の過剰なナショナリズムを戒め、世宗大教授の朴裕河(パク・ユハ)氏は『和解のために』(平凡社)で竹島の「共同統治」を唱えた。
 どちらも日韓双方の主張を公平に紹介・分析しているが、これが韓国でいかに勇気のいることか。新たな言論の登場に一つの希望を見たい。
 日本でも、外国の主張に耳を傾けるだけで「どこの国の新聞か」と言われることがある。冗談ではない。いくら日本の幸せを祈ろうと、新聞が身びいきばかりになり、狭い視野で国益を考えたらどうなるか。それは、かつて競うように軍国日本への愛国心をあおった新聞の、重い教訓ではないか。
 満州へ中国へと領土的野心を広げていく日本を戒め、「一切を棄つるの覚悟」を求め続けた石橋湛山の主張(東洋経済新報の社説)は、あの時代、「どこの国の新聞か」といわれた。だが、どちらが正しかったか。
 最近では、イラク戦争の旗を振った米国のメディアが次々に反省を迫られた。笑って見てはいられない。
 だからこそ、自国のことも外国のことも、できるだけ自由な立場で論じたい。ジャーナリズムはナショナリズムの道具ではないのだ。//

 *ひとことコメント-いわゆる村山談話は「独善的なナショナリズム」を排すべきと述べるが、この若宮コラムでは「ナショナリズム」にそのような限定すらない。

0780/7/21TBS「ニュース23」、月刊正論8月号の潮匡人による上野千鶴子論評。

 〇たぶん衆院解散の7/21の夜のTBS系「ニュース23」にTBS政治部長とかの岩田(と聞こえた)某が登場し、その日に麻生太郎首相が民主党について党大会や議員総会の会場に日本国旗を掲げない政党だと批判的に指摘したことを捉えて、<保守層に訴えたいのだろうが、国旗掲揚は(国民の)義務ではないと言っていた筈なので違和感をもった>旨の、頓珍漢な民主党擁護発言をしていた(記憶による)。
 「国家」機構以外には日本国旗掲揚の義務はないとはいえるだろうが、大会等の場所に日本国旗を掲揚しているか否かは、どのような政党かを知るための参考材料にはなる。国旗不掲揚の真偽は確認していないが、事実だとすれば、民主党の<無国籍>ぶり、あるいは反<国歌・国旗>運動をしている日教組等との「連帯」ぶり、という民主党の性格を知る上でなかなか有益だ。
 <日本国旗を掲揚できない民主党>、これは自民党等によるアンチ・キャンペーンの一つにしてよいのではないか
 それにしても、上のようなことを言って自民党・首相批判するのが、東京キー局の「政治部長」なのだ。こんな程度の人物たちがテレビの「政治」報道や「政治」関係番組を作っているのだから、日本の政治が、そして有権者の行動が歪められないわけはない、と奇妙に納得する。

 〇月刊正論8月号(産経新聞社)の潮匡人の連載「リベラルな俗物」は今回は上野千鶴子をターゲットにし、「私怨が蠢く不潔で卑猥なフェミニスト」と題する(p.188-)。
 ご苦労な文章で、なるほど上野は「私怨が蠢く不潔で卑猥な」人物なのだろうが、潮匡人の手の負えない対象でもあるようだ。
 上野千鶴子を論じるならば、その「遊び」本は除いて、上野・家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平(岩波・1990)、上野・ナショナリズムとジェンダー(青土社、1998)あたり、とくに前者を対象にし、その<フェミニズム>の具体的内容自体を批判すべきだろう。
 上野千鶴子は、<非日本共産党系、マルクス主義的フェミニスト>だ。少なくとも、マルクス主義を利用して自らの「フェミニズム」体系?を構築しようとした人物だ。<非日本共産党系>又は<非組織系>だからこそ、マルクス主義的又は「左翼」であっても(あるいは、だからこそ)東京大学が受容したのだ。
 こうしたより本質的部分に、潮匡人の分析等は説き及んでいない。
 

 〇月刊WiLL9月号(ワック)で櫻井よしこ(「自民党に求められる覚悟」、p.60-)が「…突発的なことでもない限り、八月の選挙で民主党政権が誕生するのは避けられないだろう」とすでに書いているくらいだから(?)、八月末選挙の結果はすでにほとんど明らかなのだろう。
 自民党等政権のままで日本がよくなる保障は全くないが、民主党政権又は民主党中心政権が誕生すれば日本が<ますます悪くなる=消尽し・解体していく>のはほとんど明らかだ。当たり前のごとく、「民意・ミンイ」あるいは「民主主義」が<最善の・最も合理的な・最も正しい>選択・決定をもたらすわけではないことを指摘しておく必要がある。朝日新聞が推進し、日本共産党が容認している方向なのだから、なおさらだ。些か単純化しすぎだろうが、朝日新聞や日本共産党が主張又は容認する方向に日本が向かえば日本にロクなことはない、というのが<戦後日本の普遍的な鉄則>であることを想起する必要がある。
 多数派になるだろうと又は当選者が増加するだろうと<マスコミ>等で予想されている、そのような<空気を読んで>投票先政党を決める有権者が投票者の少なくとも5%はいそうだ(ひょっとすれば20%程度だろうか)。その5~20%によって、選挙の当落が決せられる-こんな馬鹿馬鹿しい現象はない。「民主主義」には、「国民の皆様」の判断にはとっくに幻滅しておくべきだろう。しかし、政治家もマスコミも「国民の皆様」にそんなことを公言できない。
 マニフェストの基本的項目に「防衛」の項がない政党・民主党が中心となった政権ができる……、まともな状況になるために、あと何年かかるのだろうか。取り返しがつくのならばまだよいのだが。
 日本共産党社会民主党の議席減少(ますますの「泡沫政党化」)だけが楽しみであるとは、何とつまらない選挙だろう。

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