秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

台湾

0732/月刊正論7月号(産経新聞社)とNHK。

 月刊正論7月号(産経新聞社)の特集は<NHKよ、そんなに日本が憎いのか>。
 この問題を取り上げるのはよいことに決まっているが、発売部数7万弱の月刊雑誌に、いかほどの世論形成能力があるのだろうと考えると、かなり悲観的にはなる。
 「かなり悲観的」の根拠では全くないが、ネット上でNHKの今年4/28の「理事会議事録」を見ると、NHKの「考査室」が同理事会で、「プロジェクトJAPAN NHKスペシャルシリーズ『JAPANデビュー』第1回『アジアの“一等国”』(4月5日(日)放送)は、一等国をめざした日本による台湾の植民地政策の変遷をテーマに、膨大な史料と海外の研究者による解説をもとに、日本や列強の思惑をわかりやすく読み解いていたと考えます」、と報告している。  確認しないが、NHK会長・福地茂雄は「問題ない」旨を語った、と(たぶん少なくとも産経新聞で)報道されていた。
 ネット上の<産経ニュース>5/14によると、こうある。
 「NHKの
福地茂雄会長は14日の会見で『あの番組はいいところも随分言っていると思った』と、内容に問題はないとの認識を示した。/福地会長は『(当時の)産業・インフラの芽が今の台湾の産業につながっているという気がしたし、教育でも規律正しい子供たちが映っており、一方的とは感じなかった。文献や証言に基づいているし、(取材対象の)発言の“いいとこ取り”もない』と評価した」。
 問題の番組の製作者もそうだが、
福地茂雄という人物は、台湾や日本の台湾統治に関する知識など殆ど持っていないのだろう。問題の番組の製作者は<無知>のみではなく、特定の<意図>があったと考えられるが。
 月刊正論7月号の水島総の連載記事(p.282~)によると、「NHKスペシャル『JAPANデビュー』」批判の新聞「意見広告」は産経新聞の東京版・大阪版だけだったようだ。
 広告費の問題もあるだろうが、産経新聞に載せるだけでは、朝日新聞の出版物の広告記事を<週刊金曜日>に載せるのに近いのではなかろうか。問題の所在自体を知らせるだけにでも朝日新聞にも、少なくとも(部数の面で広告費も安いと思われる)日本経済新聞くらいには掲載してほしかったものだ。
 それにしても、やはりとも思うのは、水島総によると、5/16の集会と1000名を超える人々のNHK抗議デモ(中村粲の連載記事p.163も参照)について、当日のNHKニュースは「原発プルサーマル計画に反対する十数人のデモを報道」したにもかかわらず、完全に黙殺した、ということだ。
 NHKばかりではなく、産経新聞を除く全マスメディアがそうだと思われる。
 これでは勝負にならない。田母神俊雄論文問題と同様で、田母神更迭等を政府・防衛大臣が反省しないのと同様に、<一部の批判・反対はあったが…>というだけで、NHKが反省・自己批判することは、客観的にはありえそうにない。
 だからといって、むろん、今後も批判する、あるいは批判的に番組を検討することを続けることを無意味だとは思っていない。重要だ。だが、客観的情勢を観ると、たぶんに歯痒い思いがする。
 朝日新聞(系)と読売新聞(系)とが結託していれば、同じ報道姿勢を続ければ、<世論>はほぼ決定的なのではないか。潮匡人が「リベラルな俗物たち」の一人として取り上げている(p.204-)渡辺恒雄の読売新聞(系)への影響力が完全になくなり、読売新聞(系)が(今でも問題によっては朝日・毎日対読売・産経という構図になるようだ)、より産経新聞に接近することを期待する他はない(といって、産経新聞や産経新聞社出版物を全面的に信頼しているわけではない)。
 潮匡人の巻頭の方の連載コラム(p.48-49、今回のタイトルは「続・NHKの暴走」)を読んで、いつか頭に浮かんだことを思い出した。
 NHKは「LGBT」(省略)、「いろんなセクシャリティ-のかたちや価値観」があること、に好意的で、「虹色」という語を使うサイトもあるという。
 では、と思うのだが、NHKの年末の<紅白歌合戦>は男でも女でもない、男のような女、女のような男等々の存在を無視するもので、「紅組」と「白組」の二つだけではなく中間の「ピンク(桃)組」も作るべきではないのか(「虹色」でもよいが、この色はどんな色か分かりにくい)。<紅・桃・白歌合戦>、にすべきではないのか(「こうとうはく歌合戦」。虹組だと「こうこうはく歌合戦」になる)。
 <紅白歌合戦>という(「男」と「女」に分かれた)長く続く番組の名称こそ、「いろんなセクシャリティ-のかたちや価値観」を結果として排する方向のものとして、なかなか意味がある、と感じているのだが。 

0708/林建良・台湾団結連盟日本代表による4/05NHKスペシャル「第一回」批判。

 4/05のNHKスペシャル「JAPANデビュー第一回」につき、林建良という「台湾団結連盟日本代表」が、サピオ5/13号(小学館)の巻頭(p.3)でこう語っている。以下、一部抜粋。
 ・上の番組は「日本の台湾統治の苛酷さを強調し、大きな波紋を呼んだ」。「衝撃は日本人以上に台湾人の方が大きかった」。「…NHKが、なぜ事実歪曲したのかが理解できない」。「一番多く歴史証言で登場した柯徳三氏(87)は『NHKに騙された』と語っている」。「負の面の証言だけが取り上げられ、プラス評価の部分がすべて削られたからだ」。
 ・台湾(人)が「今回『反日』に仕立てられたことには強い怒りを覚え」る。「親父の世代を『反日偽造工作』に加担させたNHKの手口は、侮辱である」。「NHKのディレクターに『日本精神』はなく、台湾人に欺瞞的な手法を使った。…精神の砦は、無残にもこの若い日本人によってぶち壊された」。
 ・NHKの2007年の「青海チベット鉄道」特別番組は「チベット人への弾圧や略奪に使うあの鉄道を美化している」。今回の番組には「日台分断を図る」NHKの意図があり、さらに「中国の意向」があるのではないか。
 ・「日台さえ分断させれば中国の台湾侵略に弾みがつく。そして台湾併合後は日本も中国の勢力圏に組み込まれる。そのような侵略国家に加担するNHKは、今や銃口を自国民に向ける洗脳軍隊に化けた」。
 上の「若い」「NHKのディレクター」とは誰かは書かれていないが、この番組の<ディレクター>は、浜崎憲一、島田雄介、<制作統括>は、田辺雅泰、河野伸洋だった。
 このような林建良の批判は「一部」(の例外?)のものだとしてNHKは無視するのかもしれないが、かなり強い批判・非難だ。NHKを実質的に中国(共産党)の<手先>と、そして明示的にNHKを「侵略国家に加担する…今や銃口を自国民に向ける洗脳軍隊」と形容しているのだ。
 心あるNHK職員は、こんな番組が作られたことを憂い、嘆くべきだ。また、多くの心ある国会議員・政治家も、放送法の観点から、NHKのこの番組をもっと問題視すべきだ。
 同じようなトーンの<反日・自虐>番組が今後月に一度放送されたのでは、たまったものではない。今からでも遅くはない。第2回以降の番組内容が「公平・公正」なものかどうかも放送総局長・向英実らのNHKの権限・職責ある立場の者はチェックすべきだろう。
 なお、放送法第三の二は「放送事業者」による「国内放送の放送番組」の「編集」につき、「次の各号の定めるところ」によるべき旨を定める。各号のうち一号以外は次のとおりだ。
 「二  政治的に公平であること。
  三  報道は事実をまげないですること。
  四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」
 NHKの上の番組は、これらに正面から抵触してはいないか!? 雑誌・週刊誌や新聞社のうち産経は別として、NHK以外の放送会社や他の新聞社は、なぜこのNHKの番組に強い批判が寄せられているという事実すら報道しないのか。
 反朝日新聞と反日本共産党のみならず「反NHK」をも一般的には掲げたくないのだが。 

0701/週刊新潮4/23号におけるNHK4/05番組批判と「お詫び」。

 〇4/05のNHK番組「JAPANデビュー・第1回」につき、「少なくとも<一面的>」と前回に評した。週刊新潮4/23号(新潮社)によると、やはりその程度では済まないようだ。
 上の番組を「歴史歪曲と『台湾人』も激怒したNHK『超偏向』番組」と評する同号の巻頭記事によると、「人間動物園」との表現、台湾での「改姓名」、「宗教弾圧」につき、誤り又は歪曲等がある、という。また、番組に登場した台湾人・某氏はNHKの取材に対して日本の台湾統治は「プラスが50%、マイナスが50%」というスタンスで答えたが、放送を観たら「悪口ばかり使われているので、大変驚きました」との感想を述べた、という。以下は省くが、これらによると、「一面的」は柔らかすぎる表現で、むしろ<捏造>に近いのではないか。
 上の某氏はNHKのこの番組の背後には「日台の関係を引き裂こうとする中共の意向があるのではないか」とも「邪推」しているというが、「邪推」ではないかもしれない。
 NHKは<戦時性犯罪国際女性法廷>とやらの番組で少しはコリたかと思っていたが、確信犯的な「左翼」制作者グループがまだ残っているようだ。
 なお、同誌同号の高山正之連載コラムも結果としては全体を、上のNHK番組批判にあてており、番組制作者として、「田辺雅泰」の名前のみを出している(p.142)。
 〇週刊新潮上掲号には、朝日新聞阪神支局事件に関する同誌掲載手記が「誤報であったことを率直に認め、お詫びする…」編集長名の長い文章も載っている(p.130-)。
 これに関係して不思議に思うことがある。すなわち、2005年1月頃以降に話題になった、上でも言及した<戦時性犯罪国際女性法廷>とやらの番組放送に対する政治家(自民党)の圧力問題に関していうと、今回の週刊新潮記事(編集部)にあたるのが朝日新聞・本田雅和ら二人の記者であり、今回の件の島村征憲にあたるのが、自分自身が直接に接触をした(を受けた)わけでもないのに上司・幹部が<安倍晋三・中川昭一から「圧力」を受けた>ために改編を迫られた旨を記者会見して(涙ながらに)述べた長井暁(チーフディレクター)なのではないのだろうか。長井暁は(少なくとも中核部分では)「嘘」を述べたにもかかわらず、それを信じて取材を十分にしないまま記事にしてしまったのが朝日新聞・本田雅和らではないのだろうか。
 そうだとすると、朝日新聞は誤りを認め謝罪するべきだったと思われるが、<取材不十分>を外部委員会に指摘させただけで、訂正も「詫び」もしていない。この<開き直り>と比べれば、新潮社の方がまだマシだ。
 亡くなられた朝日新聞記者にはやや気の毒かもしれないが、彼に関する事件と自民党による<政治圧力>問題は、少なくとも同等の又は後者の方がより大きな重要度をもっていたと思われる。やや別言すれば、今回の週刊新潮には特段の<政治的>意図はなかったと見られるのに対して、朝日新聞・本田雅和には、特定の(反朝日スタンスの)政治家を貶める方向へと世論を誘導しようとする明確な<政治的>意図があったと思われる。朝日新聞はなぜ、<取材が不十分でした>程度で済ますことができたのだろう(まともな・ふつうの新聞社ではないからだ)。
 最近、某芸能人・タレントがラジオで「不適切」発言をして番組が終了し、出演停止措置が執られたとか報道されている。
 このタレントは経済的な制裁も結果として受けるわけだが、朝日新聞のとくに本田雅和、NHKの長井暁はいずれも「不適切」な仕事をした(記事を書き、あるいは「異常な」番組作成しかつ虚偽の記者会見をした)にもかかわらず、それぞれ朝日新聞とNHKを辞める又は辞めさせられることもなくのうのうと給料を貰いつづけた。これはどう考えても、不衡平・不均衡ではないか。新潮社は週刊新潮編集長を交代させるようだが、朝日新聞とNHKはそれぞれ、本田雅和と長井暁に対して、「不適切」な仕事との関係が明確に判る形でのいかなる人事的措置を行ったのか。
 朝日新聞やNHKについては、どうも腑に落ちないことが多すぎる。

0700/NHKはいかなる陰謀を企んでいるのか-4/05「プロジェクトJAPAN-JAPANデビュー第一回」。

 〇 4/05NHK「プロジェクトJAPAN-JAPANデビュー第一回」が、その「プロローグ」の内容からして奇矯なものになることは予想できた。そしてそのとおり、とくに日本の「台湾統治」に関して、少なくとも<一面的>といえる番組(・報道)内容だった。
 <ディレクター>は、浜崎憲一、島田雄介
 <制作統括>は、田辺雅泰、河野伸洋
 NHKエンタープライズ、同グローバルメディアサービスの名はなかった。
 内容の具体的なことに立ち入らない。日本李登輝友の会という団体の、つぎの抗議内容は至極もっともだと思える。以下、全文(下線・太字は秋月)。
 「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの〝一等国〟」に対する抗議声明
 貴日本放送協会(以下、NHK)は、去る四月五日午後九時から「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの〝一等国〟」という番組を放送した。

 私どもは台湾を「日本の生命線」と位置づけ、日本と台湾の交流のシンボルである李登輝元総統の名を冠し、平成十四年に台湾との文化交流を目的に設立した団体であり、台湾の日本統治時代にも深い関心を抱いてこれまで活動してきている。そこで今回の放送は多大の関心を持って観た。

 だが、期待はものの見事に打ち砕かれた。私どもが知る台湾の日本語世代の人々の常日頃の発言と大きくかけ離れており、反日的と思われる発言だけを取り上げた印象は拭えず、日本の台湾統治時代を批判するため、台湾人の証言を都合よく操作し、「反日台湾」を印象付けるためだったのかとしか思えない内容であった。光と影の影のみを強調した印象は否めない。また、日台離間を企図しているのかとさえ思われる内容でもあった。

 番組を観た多くの方からも「実にひどい番組」「偏見に充ちた内容」という感想が寄せられている。台湾からも「大変不快だった」との声が寄せられ、若い世代の間では「僕のおじいちゃんは日本大好きなのに、あの番組は変だよ」「NHKはどうしてこんないい加減な番組を日本人に見せるのだろう」という疑問の声が噴出しているという。

 番組内容には批判すべき点が多々あるが、聞き慣れない「日台戦争」という呼称が出てくるし、後藤新平は出てきても、それは台湾人三千人を処刑した匪徒刑罰令の実行者として出てくる。また、台湾特産の樟脳産業を立て直すために基隆港を大型化し縦貫鉄道を敷いたと説明する。

 しかし、八田與一や後藤新平の事績を高く評価する李登輝氏の総統時代、一九九七年に台湾で刊行された中学校の歴史教科書の副読本『認識台湾』では、第七章に「日本植民統治時期の政治と経済」、第八章に「「日本植民統治時期の教育、学術と社会」を設け、例えば米やサトウキビの生産については「米の増産と糖業王国の確立」との見出しの下、生産量のグラフを掲載していかに生産量が上がったかを示していた。縦貫鉄道については「各地を結ぶ交通運輸を改善した」と記していた。

 確かに台湾統治では同化政策を進めた。差別もあった。この差別について、特に台湾の日本語世代は日本人の前ではあまり語りたがらない一面があることを私どももよく知っている。だが、日本統治を評価していることも事実なのである。それは、八田與一を高く評価していることに如実に現れている。故に、台湾をよく知る人々には、著しくバランスに欠けた内容と映じ、統治時代の歴史に真正面から向き合っていないという印象を強く残したのである。

 従って、日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような史観で番組を制作することは、公共放送として許されるべきではない

 ついては、ここに今回の放送内容に厳重抗議する。それとともに、この番組の脚本を作成する上で参考にした書籍など全資料の開示を要求する。
 平成二十一年四月九日
 日本李登輝友の会
  会長 小田村四郎
  副会長 石井公一郎
      岡崎久彦
      加瀬英明
      田久保忠衛
      中西輝政
 日本放送協会 会長 福地茂雄殿」
 この抗議に対してNHK広報局は、「歴史を振り返り、未来へのヒントにしたいという番組の趣旨を説明し、理解していただきたいと考えています」と反応したという。
 これでは誠実な対応に全くなっていない。
「歴史を振り返り、未来へのヒントにしたい」という、その具体的な内容・方法をこそが批判されているからだ。抗議者を嘲笑し、抗議内容を無視する、おざなりの文章としか思えない。NHK広報局には、理屈・論理・日本語文章を理解できる<ふつうの>人間はいないのか。
 一点だけ付記する。日本の「台湾統治」を<悪>として一面的に描くことは、台湾が日本領土になったこと、その原因としての日清戦争の勝利の評価と無関係ではない。
 NHKは日清・日ロ戦争を含む司馬遼太郎「坂の上の雲」をドラマ化しているようで、前宣伝にも熱心だが、そのことと、この「プロジェクトJAPAN-JAPANデビュー」で訴えたいことと整合性はあるのか?
 司馬史観うんぬんはどうでもよい。<東京裁判史観>が<悪>と見なしているのは1930年代以降の日本の軍事行動・戦争だと思うが、いつかも触れたように、昭和の戦争=<侵略>戦争=<悪>(謝罪の対象)という<村山談話>史観=<東京裁判史観>を支持する者たち(「左翼」)は、日清・日ロ戦争をどう「歴史認識」するのか?? これはさらに明治維新の評価にも関連してくる。単純な是非論はできないだろうが、少なくともこれらとの関係も総合的に論じないと、「台湾統治」の評価も適切なものにはならないのではないか。
 さらに関連して。4/04にNHK解説委員・五十嵐公利は「日本は開国によって独立を確保した」旨を語ったが、その「独立」を維持し続けることができたのは日清・日ロ戦争の勝利(少なくとも不敗)があったからで、これらのいずれかに敗戦していれば、1945年を待たずして日本の「独立」は危うかったのではないか。
 五十嵐公利がまともな人間ならば、この問いにもどこかで答えてほしい。

0498/産経新聞5/08櫻井よしこ論考と佐伯啓思。

 産経新聞5/08櫻井よしこ「福田首相に申す」は、中国共産党のチベット人・ウイグル人弾圧・「文化の虐殺」が進行中だとしたあと、「近い将来、台湾制覇のため南進すると思われる」と書き、さらにつづけて「そうなれば、日本にとっても深刻な危機が到来する」とする。
 <異形の国家>・共産党独裁の中国は、まずは尖閣諸島を皮切りに沖縄諸島から始めて、日本列島全域を支配することを狙っているものと思われる。太平洋(の軍事管理)を米国と中国で東西に二分しようと中国要人が米国人に発言したとかの報道(氏名・役職等の詳細を確認しないままで記憶で書いている)も、上のことが全くの杞憂でないことを裏付ける。
 となると、日本は中華人民共和国日本州となり日本人は日本「人」ではなく日本(大和?、倭?)「族」と称されるのだろう。中国の一部とされなくとも旧ソ連と旧東欧との関係の如く、中国の<傀儡>政権(日本共産党が存続していれば参加?)のある実質的な<属国>になる可能性もある。
 そうなれば、―最近、伊勢神宮等の神社・神道のことについて書く機会が増えたが―伊勢の神宮を含めた、神社という「日本的な」ものは、―チベットの仏教施設がそうなっていると報道されているように―すべて又は殆ど破壊され、解体されてしまう可能性もある。日本全国から、根こそぎ、「神社」(お宮さん)が破壊され、なくなってしまった日本という地域は、もはや「日本」ではないだろう。同様のことは日本仏教・寺院についても言える。
 上のことが全く杞憂とは言えないのは、1945年の占領開始の頃に、主だったいくつかの神社を除く多数の神社はすべて潰される(物理的にも破壊される、又は自ら破壊しなければならない)のではないかとの危惧と<覚悟>を神社関係者はもった、ということを最近何かで読んだことでも分かる。幸い、GHQは、神社・神道があったからこそ戦争が開始された、とは理解しなかったので<助かった>ようなのだが。
 ところで、櫻井よしこは、福田首相が「念頭に置くべき」なのは、「異民族も含めた中国の人々、そして国際社会に向かって、いかなる普遍的価値観に基づいた言葉を発することができるか」という点だ、とも主張している。
 ここでの「普遍的価値観」とは生命を含む<人権>の尊重、信教の「自由」の保障を含んでいるだろう(民族の自決権は?)。
 かかる「普遍的価値観」はアメリカのそれであり、<左翼>価値観だとして日本の保守派がそれを主張するのは<奇妙な光景だ>と言ったのが佐伯啓思だった。前回言及した、佐伯啓思・学問の力(NTT出版)でも同旨のことが述べられているようだ(p.164~)。だが、アメリカの独立と統一(連邦化)を支えた思想がフランス革命の際の「左翼的革命思想に近い」(p.164)と言えるのかなお吟味が必要だと感じるし、それよりも、戦略的に(本当に「普遍的」かは厳密には怪しいだろうことは認めるが)「普遍的価値観」なるものに基づき中国(・胡錦涛)に対して発言することは当然でありかつすべきことで、少なくとも批判・揶揄されることではあるまい、と考えるが、いかがなものだろう。

0224/一部の日本人は李登輝のように日本を「愛せ」ないのか。

 週刊新潮6/21号の連載コラムで櫻井よしこも扱っているが、台湾の李登輝前総統が5/30に訪日し6/09まで東北地方や東京・靖国神社を訪れた。
 彼が言ってくれていることを読むと、嫌日・反日・侮日の新聞や人びとが、日本国民のくせをして日本を、日本の政治家も含めて、悪し様に言っていることが恥ずかしくなる
 有楽町の日本外国特派員協会で9日に行われた李登輝・台湾前総統の講演要旨は次のとおりだ。記録に残しておきたい。なお、ソースは「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」平成19年(2007年)6月10日(日曜日)通巻第1830号(臨時増刊)であること、私がさらに一部省略して簡略している部分があること、をお断りしておく。
 <▽人間とは何か、日本の若人に問うた。/  10泊11日の訪日の旅を終えて、きょう、台湾へ帰る。/学術、文化、「奥の細道」の探訪が目的で、成功したと思う。/6月1日、「後藤新平賞」の第一回受賞者となる光栄に浴した。その時に「後藤新平と私」という講演のなかでも述べたが、後藤新平の偉大な人間像が150年後の今になって認識されるようになったことは、強い精神的なものが国家、社会にとって必要なものとなったということだ。/この旅は、今までで最高のものとなり、奥の細道は半分だけだが探訪し、日本文化の特徴である自然との調和を実感した。/芭蕉の足跡を全て辿ることができず、深川・千住・平泉・山寺・象潟のみで新潟以降は次回となった。
 秋田国際教養大学では、「日本の教育と台湾、私の歩んできた道」というテーマで特別講義を若い大学生たちにし、日本的教育を受けて得た経験を話した。/それは人間とは何ぞや、私は誰だとの問いに答えを得たということだ。専門的教育以外に教養として人間のあるべき姿、私は私でない私であるという人生の結論を得られた。/人生の価値観への理解と、種々の問題に直面した時にも自我の思想を排除して客観的な立場で正確な解決策を考える事が出来た。
 6月7日早朝、靖国神社を参拝した。/日本・中国・韓国で、政治問題・歴史問題として大きく取り上げているが、私は第二次世界大戦で亡くなった兄の冥福を祈るだけだ。/62年間会っていない、位牌・墓もなくどうしているか分からない親しかった兄だ。東京に来る困難もあり、慰霊・冥福を祈れて、生涯忘れない思い出となった。/その夜、学術的な講演をした。私なりの研究を述べる事が出来、世界の情勢に対する客観的な私の知っている限りの学術的な話をした。政治的だとは思わない。
 ▽アジアは大きく動くだろう。/世界、東アジア、両岸台湾海峡について次のように述べた。/2007年のロシアと中国の重要度は、アメリカがイスラム世界で巻き起こした衝突、世界の反テロ戦に劣らない。/アメリカとイランの対立は一方が勝利を得ることなく、政治的な解決に向かう可能性を有している。/世界のリーダーであるアメリカの政治的機能の麻痺:外交でのイラク問題、内政でのブッシュ政権の弱体化、これらに乗じてベネズエラ~ソマリア~アジアに至る国々の中で、アメリカに挑発的な国が侵略的行動に出るように思われる。
 2007年の東アジアは政治の一年になる。日本・韓国・豪州・台湾・比国で選挙がある。中国・越国・北朝鮮の三国も党内人事の大異動がある。これにより内部権力の再分配が起こる。その間2007年の国際政治は比較的安定する。/アメリカは一時的にアジアにおける主導権を失う。/一変するのはアメリカが新たな政治的周期、次の大統領選挙後に新政権が出来るまで待たなければならない。
 アジアは第二次世界大戦前に戻ったようだ。東アジアは地域内に限定される権力抗争の主軸が日本と中国だ。/2007年と8年、中国が東アジアを主導することが出来たなら2008年5月に就任する台湾総統は中国から一段と厳しい挑戦を受けるだろう。
 さて旅の感想を言えば、前回は一年半前だったが、東京には来れず、日本を一週間訪問・観光し、名古屋・金沢・京都を回った。今回は奥の細道だけでなく東京に来られて多種多様なかたちで展開できた。
 前回と今回の旅行で強く感じたことは、戦後60年で日本が大変な経済発展を遂げていることだ。私は昭和21年、新橋の焼け野原に建っていた家に住んでいた。その時の有楽町と今を比べると天地の差だ。/焦土から立ち上がり、世界第二位の経済大国を作り上げた国民の努力と指導者の正確な指導に敬意を表する
 もうひとつは、日本文化が進歩した社会で失われていなかったことだ。/失われた面もあるが、ほとんどは失われていなかった。大戦の結果、耐え忍ぶしか道はなかった。忍耐するしかなかった。経済一点張りの繁栄を求めることを余儀なくされた。そうした中にあっても伝統や文化を失わずに日本は来た
 ▽日本人のすばらしさが復活していた。/日本の旅行で強く記憶に残っているのは、さまざまな産業におけるサービスのすばらしさだ。/戦前の日本人が持っていたまじめさ、こまやかさがはっきりと感じられた。今の日本人がダメだということも聞くが、私は決してそうは思わない。日本人は戦前の日本人同様、日本人の美徳をきちんと保持している。社会が全部秩序よく訓練されて人民の生活が秩序よく守られている
 たしかに外見的には弛んだ面もあるだろう。それはかつての社会的な束縛が解放されたからで、日本人の多くは社会の規則に従って行動している
 東京から仙台、日光へと移動する間、よく観察していると日本人は本当に社会の規則に従ってみんな正しく行動しているということだ。他国ではなかなか見つからない
 社会的な秩序がきちんと守られ、公共の場所では最高のサービスを提供している、清浄に保たれている。高速道路を走ってみるとチリ一つない。/ここまで出来るのは日本だけだろう。
 かつて日本の若い人に会ったときは、自分だけよければいい、国なんか必要ないという考え方が強かったようだが、社会・国家への考えた方が、大きく変わり始めた
 戦後60年の忍耐の時を経て、経済発展を追求するだけでなく、アジアの一員として自覚を持つようになった武士道精神に基づく日本文化の精神面が強調され始めた。日本文化の高い精神面が高く評価されている。/日本文化は大陸から西から滔々と流れ込んだ大波の中で驚異的な進歩を遂げ続けてきた。/結局、一度としてそれらの奔流に嚥み込まれることなく、日本独自の伝統をりっぱに築き上げてきた
 日本人には古来稀な力と精神が備わっている。/外来の文化をたくみに取り入れながら自分にとってより便利で受け入れやすいものに作り変えてゆく。このような新しい文化の創造というのは一国の成長・発展という未来への道にとって非常に大切なものだと思う。/天賦の才に恵まれた日本人が、簡単に日本的精神といった貴重な遺産や伝統を捨て去るはずが無いと堅く信じている。
 日本文化とは何か?/私は高い精神と美を尊ぶ、いわゆる美学的な考えを生活の中に織り込む心の混合体こそが日本人の生活であり、日本の文化そのものであると言わざるを得ない。
 次に日本を訪問する機会があれば、日本は歴史的にもっと創造的な生命力を持った国に生まれ変っているものと信じている。(講話はここで終了。以下質疑応答の中での李登輝氏のコメント)。
 ▽台湾は我々のモノである!/靖国神社への参拝が外国の人や政府によって批判されるが、これは何の理由もない。/自分の国のために亡くなった若い人をお祀りするのは当たり前のことだ。総統だった12年間の春夏、忠烈祠にお参りした。/この人たちは正直に言うと台湾と無関係な人たちばかりだ。台湾のために血を流した人々ではない。人間として、ひろく人類愛の考え方で慰霊した。
 中国に挑戦はしていない。/内戦状態を続けてきたのであり、その内戦を停止した。北京政府へ互いによく付き合っていこうと、大陸委員会、海峡委員会で王道函と辜振甫が話し合ってきた。国と国の間における静かな安定した状態をつくることが大事だ。
 日本人は中国人を余り知らない。/60年間の中国生活が何を私に教えたか。中国人になって中国人と話をしなければならないということだ。日本的な日本人の立場で中国人と話しても話は合わない
 安倍首相を褒めることになるが、日本人がアジアの自主的な力を持った国家になるには、まず先に中国を訪問し信頼関係をつくりましょうとは上等な布石であったと信じる。/布石がなければ定石にならない。こうして国と国の関係を作り上げてゆくのは正しいやり方だと思う。
 サンフランシスコ条約で日本は台湾を誰に返還したのか?/マッカーサーの指令第一号で日本は蒋介石に対して降伏しただけで、主権の存在は不明瞭のままだ。/中国人は台湾を中国のものと考え、アメリカ人もそう考えているかもしれない。しかし台湾人2300万人が主権を握っているはずだ。/だから台湾はすでに存在する独立した一つの国だ。/独立するという必要は無い!/中国は反国家分裂法を制定して逆に頭痛の種になっていると思う。/ドイツの放送局に言った(99年7月)が、台湾の地位は非常に複雑な状況に置かれている。判決の無い特殊な状態だ(「二国論」)。/台湾の住民が自分の国だと言わなければ、誰も助けてくれない。/将来の台湾海峡の問題は二つだ。台湾問題とアメリカ問題だ。
 台湾は我々のものである。/すでに独立した、自由で、平和な、 民主的な国だと主張すること。アイデンティティを持つことだ。/WHO AM I?より WHO ARE WE?だ。

 上の太字にした部分の中には、涙が滲みそうになる部分もある。22歳まで日本人だったという外国人が、日本を、日本人を、日本の文化を褒め、讃えてくれているのだ。一部の日本人に掻き混ぜされたり、「日本」が破壊されたりしては、この李登輝のような人に対して、まことに申し訳ない。

ギャラリー
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2564/O.ファイジズ・NEP/新経済政策④。
  • 2546/A.アプルボーム著(2017)-ウクライナのHolodomor③。
  • 2488/R・パイプスの自伝(2003年)④。
  • 2422/F.フュレ、うそ・熱情・幻想(英訳2014)④。
  • 2400/L·コワコフスキ・Modernity—第一章④。
  • 2385/L・コワコフスキ「退屈について」(1999)②。
  • 2354/音・音楽・音響⑤—ロシアの歌「つる(Zhuravli)」。
  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
  • 2320/レフとスヴェトラーナ27—第7章③。
  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
  • 2302/加地伸行・妄言録−月刊WiLL2016年6月号(再掲)。
  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
  • 2277/「わたし」とは何か(10)。
  • 2230/L・コワコフスキ著第一巻第6章②・第2節①。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
  • 2179/R・パイプス・ロシア革命第12章第1節。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2101/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史10。
  • 2101/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史10。
  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
アーカイブ
記事検索
カテゴリー