4/20の菅直人・安倍首相の論戦をテレビで途中から立ち見をした。「藤岡氏」などという名前を出して「知っているか」と菅氏が安倍首相に質問したところからだった、と思う。
 新聞では詳細には報じられていないが、どうやら安倍首相が「つくる会」の藤岡信勝と親しく、彼の助言・協力があって、安倍首相の関与のもとに、沖縄戦集団自決「命令」に関する歴史教科書の修正があったのでないか、と菅は疑っているふうだった。
 伊吹文明文科相は菅の挑発もあってボロを出しそうな懸念をもったが、安倍首相は、首相や文科相は個々の検定意見に無関係とだけ答えて突っぱねていた。
 菅は、慰安婦問題では「狭義の強制性はなかった」と自分の見解を述べたのにこの沖縄戦集団自決問題では答えないのは矛盾しており卑怯だとか言っていたが、安倍首相は、「狭義の強制性はなかった」というのは当時の政府の調査結果のことで、その旨の見解(たぶん石原信雄発言)を紹介しただけとかわしていた。
 安倍首相の「元気さ」ぶりも印象的だったが、菅直人の不勉強ぶりも目立つ。首相の指示で教科書書換えがなされる制度にはなっていない。宮沢首相時代に「近隣諸国条項」なるものができたらしいことの方が大問題なのだ。
 もう一点、菅は、米下院での慰安婦日本非難決議問題に関して、ずっと静かだったのに、安倍首相になってからこの問題が出てきた、首相発言が火をつけたのではないか、旨を質問していた。安倍首相は、関係ない、とかわしていた。
 この決議案は毎年のようにホンダ議員らによって提出されてきた筈だ。そして、下院で米民主党が多数派になったからこそ採択可能性が生じ、日本でも話題になり始めたのだ。
 意識的に曖昧にしていたのかもしれないが、菅は、安倍「戦後体制脱却=歴史認識是正」内閣の登場が、米下院に「火」をつけたかのようにも理解できる質問の仕方をしていた。
 菅直人はそれなりに能力のある政治家だとは思うが、前提としての事実認識が不正確又は曖昧であれば、適切な意見・主張になるはずがない。対立する政党の党首でもある安倍を困らせてやろうとの<政略的>意図があれば尚更だ。
 藤岡に関して「誰を知っているか私が答えることに何の意味があるのか」とか、沖縄戦集団自決問題に関して「首相としての私が認識を示すことに何の意味があるのか」旨等の安倍首相の答弁は、見方によれば「逃げ」・「ごまかし」にも見えるのだろうが、答弁内容自体が不適切なわけではない。
 菅の設定した土俵の上に簡単には乗らない強い自信と発言力をとっくに安倍首相は身につけている。結構なことだ。
 菅には<辛ガンス問題>という過去の弱点、いや「汚点」がある。また、それなりに能力はあっても、鳩山由紀夫と同様に、やはりまだ<戦後民主主義>教育の弊害から抜け出ていない。