秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

ビッソン

1213/戦争中・占領期当初のコミンテルン・共産主義者の暗躍-江崎道朗著。

 江崎道朗・コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾(展転社、2012)のタイトルは、コミンテルンとその影響をコミンテルン(・共産主義者スパイ)から受けた米大統領によって、敗戦後の日本に対して「時限爆弾」があらかじめ仕掛けられていた、という意味だろう。
 なぜアメリカは戦前に<反日・親中>だったのか、なぜ日本には攻撃的で中国には融和的だったのか。その判断は、のちには中国共産党による大陸中国の「共産化」や南北朝鮮の分離・北朝鮮の「社会主義」化につながり、資本主義国アメリカにとっては大きなミスだったのではないか。そのような判断ミスそして政策・戦略ミスは何故生じたのか、というのはかねて持ってきた疑問だった。
 近年になって、ルーズヴェルト大統領の側近にコミンテルン(モスクワ)のエイジェントがいて、共産主義・マルクス主義に対して「甘かった」同大統領とソ連(・スターリン)とを
結びつけ、アメリカは<反日・親中>政策を採ったことが明らかになってきている。

 中西輝政監訳・ヴェノナ(PHP、2010)についてはこの欄で触れたことがある。
 江崎の冒頭掲記の著書も、主として第三章「アメリカで東京裁判史観の見直しが始まった」で、コミンテルン・同スパイ・アメリカ共産党等の運動・行動について扱っている。
 その内容を簡単にでも紹介することは避けるが、江崎の本よりも第一次資料・史料といえる文献で邦訳されているものやその他の日本語文献があるようなので、以下にリスト・アップしておく。
 第一節「外務省『機密文書』が示す戦前の在米反日宣伝の実態」より(p.126-)
 ①馬暁華・幻の新秩序とアジア太平洋(彩流社)

 ②山岡道男・「太平洋問題調査会」の研究(龍渓書房)

 ③H・クレアほか・アメリカ共産党とコミンテルン(五月書房)

 ④レーニン・文化・文学・芸術論(上)(大月書店)

 ⑤中保与作・最近支那共産党史(東亜同文会)

 第二節「ヤルタ協会を批判したブッシュ大統領と保守主義者たち」より(p.146-)

 ⑥H・フィッシュら=岡崎久彦監訳・日米・開戦の悲劇(PHP文庫)

 第三節「アメリカで追及される『ルーズヴェルトの戦争責任』」より(p.162-)

 ⑦エドワーズ=渡邉稔訳・現代アメリカ保守主義運動小史(明成社、2008)

 第四節「『ヴェノナ文書』が暴いたコミンテルンの戦争責任」より(p.178-)

 ⑧中西輝政監訳・ヴェノナ(PHP、2010)〔所持〕

 ⑨A・コールター・リベラルたちの背信-アメリカを誤らせた民主党の六十年(草思社)

 ⑩クリストファー・アンドルーほか・KGBの内幕・上(文藝春秋)

 ⑪楊国光・ゾルゲ、上海ニ潜入ス(社会評論社)

 ⑫エドワード・ミラー・日本経済を殲滅せよ(新潮社)

 第五節「コミンテルンが歪めた憲法の天皇条項」より(p.203-)

 ⑬ウォード・現行日本国憲法制定までの経緯

 ⑭ビッソン・ビッソン日本占領回想記

 以上 

0961/仙石由人は自殺するか? ノーマン―ビッソン-「ヴェノナ」文書。

 一 ヘインズ=クレア〔中西輝政監訳〕・ヴェノナ(PHP研究所、2010.02)の序章の冒頭の文章によると、「ヴェノナ(Venona)」または「ヴェノナ文書」とは、かつてアメリカ合衆国政府が「ヴェノナ作戦」と名付けた暗号解読作戦によって「傍受解読」された、暗号通信の記録文書の総称だ。ここで暗号解読作戦とは、第二次大戦前後の時期に「米国内のソ連スパイたちがモスクワの諜報本部との間でやり取りした約三〇〇〇通に上る秘密通信」を秘密裡に「傍受し解読」することをいう。そして、この「ヴェノナ(文書)」の具体的内容は「最高機密」とされ「ほぼ半世紀近くにわたって秘匿」されて一般の知るところではなかったが、1995年に「公開」された。上の本は大まかにいって、その原資料によって当時のコミンテルン(ソ連・モスクワ)のスパイ等の活動内容を、人名の特定もしつつ明らかにしたもの。

 20世紀米国史への見方を根本的に変える可能性があるらしいが、そうだとすると、米国(または米国人や米国滞在者)と関係するかぎりで、第二次大戦前後や占領期の日本史をも大きく「書き換える」可能性があるだろう。

 全体の量(資料等を除いても500頁超)からするとほぼ1頁しか費やされていなくて少ないが、トーマス・A・ビッソンについての言及もある。

 上掲書p.257によると、GRU(ソ連軍諜報機関・「参謀本部情報総局」)のエージェントの一人だったジョセフ・バーンシュタインが、GRUニューヨーク支局主任に対して「T・A・ビッソンと友人になったと伝えてきた」ことを記す文書がある、という。以下は、上掲書の著者たちによる文章(の一部)。

 ・ビッソンはのちに「アーサー」とのカバーネームを与えられた。
 ・彼は「中国共産党の熱烈な擁護者」で二つの雑誌の創刊メンバー。そして、毛沢東下の中国共産党員は「真のマルクス・レーニン主義者ではない」、中国は「民主主義的な中国」と表現されるのが正しい、毛沢東支配地域の体制は「ブルジョワ民主主義が核」などと一般には(対外的には)主張した。

 ・かつて務めていた米国「経済戦争委員会」の「秘密の報告書」をバーンシュタインに提供し、GRU(ニューヨーク支局)はそれを「ソ連の外交文書でモスクワに送った」。この報告書は独ソ戦の分析・中国の米兵・中国滞在の日本人の商取引等々に関する報告を含んでいた。
 トーマス・A・ビッソンはソ連・GRUのエージェント(情報源)だったというわけだ。中西輝政らの訳者が作成した「参考人名録」によると、ビッソンは1943年に米国下院「非米活動特別委員会」で「(アメリカ)共産党」との関係を詰問されたが「否定」。1946年にGHQ民政局に入り、GHQ起草の日本国憲法草案の日本語訳等に携わり、1947年に帰国。

 二 日本国憲法の制定過程における米国・GHQ側の重要人物の一人であったからでもあろう、その制定過程にもかなり言及している、ビッソン日本滞在中の妻あての手紙を収載した書物は邦訳されて出版されている。

 ビッソン・日本占領回想記(三省堂、1983。原書1977)だ。この原書や訳書の刊行時点で、ビッソンとソ連・GRUとの関係はまだ明瞭にはなっていない。
 上の本の訳者は講座派マルクス主義歴史学者で日本共産党員の可能性もある中村政則ら(中村政則と三浦陽一)。

 中村政則は上の本の「解説」の中で、妻あて手紙の中にビッソンは日本滞在中の「オーエン=ラティモア、E・H・ノーマン、…都留重人らとの交友の記録が随所に書き留められており、彼をとりまく知的サークルの雰囲気が彷彿と伝わってくる」と書いている(p.329)。

 中村政則は知らないままで書いているのだろうが、「ヴェノナ文書」の公開もあって、オーエン=ラティモアとE・H・ノーマンの二人のソ連・モスクワとの関係、彼らの「エージェント」性(または「共産主義者」性)はほとんど明らかになっているものと思われる(上掲書・ヴェノナでの確認はしていない)。

 マルクス主義者・中村政則は、「マッカーシズムの狂気は、一九五七年、ノーマンを自殺に追いやった」と書くが(p.340)、この、日本における近代国家の成立(岩波)の著者として知られるカナダ人に対するマッカーシーの疑いは、「狂気」ではなく、正当なものだったように推察される(なお、ビッソンも疑われたが、その直後を除いていちおうは「ふつうに」人生を終えたようだ)。
 なお、ノーマン、ラティモア、都留重人についてはいずれさらに何かこの欄で書く。

 三 「戦後日本」は、何とコミュニスト(共産主義者)または親共産主義者(・親社会主義者)に寛容なことだろう。

 戦後ずっと今日まで、ソ連・中国等々と<親分>は変わっても、少なくとも実質的・客観的には、<社会主義国のための情報源または代理人>として仕事をし生活をしている日本人の何と多いことだろう

 かりにその点を指摘され追及されたとしても、彼らはE・H・ノーマンのように「自殺」しはしないだろう。追及はそれほどに苛酷になることはありえないし、それほどに心理的に追い込まれることもないだろうからだ。むしろ、偏狭で排他的なナショナリズムをもって「日本のために」生きるのは<古い>思想・発想で、とりわけ東アジア諸国に優しい、過去の日本の歴史と誠実に向かい合う、「地球市民」として仕事をし、生活しているのだ、と開き直るのだろう。

 刑事事件にするつもりがないくせに裁判資料だとの理屈で尖閣諸島・中国船衝突のビデオの公開を拒んだ者(仙石由人ら)は居座り続け、あえて当該ビデオを「流出」させた海上保安庁職員(保安官)が1年もの懲戒停職処分を受け、おそらくは辞職を余儀なくされるとは、日本は依然として、あるいはますます、<狂った>ままでないか。

 ①逮捕・勾留していた中国人の「釈放」は検察の判断ではなく仙石由人らの実質的「指示」(かたちの上では「示唆」にでも何でもできる)によるのだったとすれば、②中国政府との間で仙石由人(ら)は<尖閣ビデオは公開しない>と「約束」していた(その代わりに北京で拘束された日本人は解放された)のだとすれば、仙石由人は、国会で、国民に対して、<真っ赤なウソ>を公然とついていたことになる。

 近い将来、2010年秋の上の二つに関する仙石由人発言が全くの<虚偽>だったことが明らかになれば、「赤い官房長官」・仙石由人は<自殺>するか?

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