秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

ドイツ社民党

0862/外国人(地方)参政権問題-月刊正論・長尾一紘論考と産経新聞4/11記事。

 月刊正論5月号(産経)の長尾一紘「外国人参政権は『明らかに違憲』」p.55に以下の趣旨がある。
 <「許容説はドイツにおいて少数説」だ。当時(1988年)も現在も「禁止説が通説」。マーストリヒト条約によりEU内部での「地方選挙権の相互保障」を認め合うこととなり、ドイツでは「憲法改正が必要」となった。その結果、「EU出身の外国人」の地方参政権は「与えてよい」ことになった。「その他の国からきた外国人」については現在でも「憲法上禁止されていると考えられて」いる。>

 この叙述とはニュアンスと内容のやや異なる情報が、産経新聞4/11付に載っている。「外国人参政権/欧米の実相」の連載の一つだ。「『招かれざる客』めぐり二分」との見出しの文章の中に以下がある(署名、ベルリン・北村正人)。

 <ドイツでは80年代にトルコ人が地方選挙権を求めて行政訴訟を起こし、「法改正により外国人に地方…選挙権を与えても」違憲ではないとの判決があった。そこで、社民党政権の2つの州で外国人地方参政権付与の「法改正」があった。

 だが、保守系〔CDU・CSU、ちなみにメルケル現首相はCDU〕連邦議会議員らが「違憲訴訟」を起こし、連邦憲法裁判所は90年に「国民」=「国籍保有者」として、2州の「法改正」を「違憲」とした。

 現在、「左派党」政権の3つの州が「定住外国人に地方参政権を付与する」連邦憲法(基本法)改正案を連邦参議院(秋月注-ベルリンに連邦議会とは別の場所にある第二院で各州の代表者たちから成る)が「発議」している。>

 現在は憲法裁判所判決の結果として憲法(基本法)の解釈による付与の余地がないので、付与の方向での憲法(基本法)自体の改正の動きが一部にはある、ということのようだ(その運動議員の考えと写真も紹介されている)。

 なるほど「少数説」だったかもしれないが、かつて西ドイツ時代の11州のうち2州は(連邦憲法裁判所の「違憲」判決が出るまでは)外国人に「地方選挙」の「選挙権」を認める、という<実績>まであったのだ。当然に、それを支える法学者たちの見解もあったに違いない。また、<左派>の社民党(ドイツ社会民主党)や現在の「左派党」〔または「左翼党」、die Linke〕が付与に熱心だということも、日本と似ていて興味深い。

 この「記事」中、「法改正」とは「州法律」の「改正」のことだろう。「地方選挙」が何を指しているかはよく分からない。「州」議会議員選挙は含まず、記事中に引用の連邦憲法中の「郡および市町村」〔Kreis、Gemeindeの訳語だと思われる〕の議会の議員の選挙なのだろう。ドイツの州は連邦を構成する「国」ともいわれ、「地方」ではなさそうなので。また、「選挙権」とだけ書いているので、被選挙権を含んでいないのだろう。

 ともあれ、上の二つの種類の情報を合わせて、ドイツのことはある程度詳しく分かった。

 両者には、とくにドイツの現在の法的状況について、異なるとも読めるところがあるようだ。現在ベルリンにいるらしい産経・北村の方が正確または詳細かもしれない。
 以上は感想のみだが、この外国人参政権問題についてはさらに別の機会に触れる。

0811/「レーニンから毛まで」。<容共>か<反共=反コミュニズム>かが基本的対立軸。

 産経新聞社の別冊正論あたりに近いだろうか、ドイツの新聞社 Die Zeit〔時代〕 が季刊で「Die Zeit /歴史」という本又は雑誌を発行していて、今年秋号で第18号になったようだ。
 その2009-03号のタイトルは<危機の予言者-カール・マルクス>。内容を紹介するつもりはないし、その能力もない。
 目次を瞥見して興味を惹いたのは、Iring Fetscher(イリング・フェッチャー)という人物が「父の名前において-レーニンから毛まで-マルクスのイデーから生まれたもの」という文章(論文)を書いていて、マルクス-レーニン-毛沢東を一つの系統として捉えていることだ。毛(沢東)の名前が挙がるなら、実質的には「金日成まで」続いていると理解して何ら差し支えないだろう。
 毛沢東と金日成のあと、中国と北朝鮮において、体制の基本的思想において断絶はあったのか。むろん、<市場経済>を一部で導入した中国のように、政策的に重要な変更はある。だが、毛沢東や金日成の後継者たちが両国を支配していることにほとんど誰も異論を挟まないだろう。
 だとすれば、イリング・フェッチャーの言葉を借りれば、<マルクス・レーニンから毛沢東・金日成まで、そして現在の中国・北朝鮮の指導者たちまで>という系列を語ることが可能だ。
 日本共産党のように、マルクスとレーニンまでは「正しく」、スターリンから誤って<真の社会主義>ではなくなった(少なくとも目指す国でなくなった)、などという<寝言>を、ドイツ人を含む欧米人は誰も(一部のマルクス主義者を除き「ほとんど」が正確だろうか)語ってはいないだろう。
 現時点ではまだ政権与党であるドイツ社会民主党も戦後に早々と<反共=反コミュニズム>を明確にし、そのゆえにこそ、政権を担え、首相も出せる<現実的・建設的な>政党になった。
 <反共=反コミュニズム>は、欧米では、諸国民や知識人たちの(ほとんど)<常識>であるに違いない。
 日本ではどうか。<反共=反コミュニズム>は一部の<保守・反動>・<右翼>の心情で、共産主義=コミュニズムに対しても<優しく><リベラルな>のが(つまりは<容共>が)<進歩的>な感性の人間だとの、根拠のない思い込みになお多くの国民が陥っているように見える。はなはだしいのはマスメディアに従事する輩たちであり、大学の人文・社会系の学者たちだ。
 「レーニンから毛まで」と簡単に断言することのできない、曖昧な知識人・マスコミ人士の何と多いことか。
 グローバル化というなら、こういう<反共=反コミュニズム>においても日本は<国際標準>に合わせるべきだ。そこに達していない日本は、欧米に比べて<グロテスクに異様だ>と感じなければならない。
 もともと外国所産の思想に対する<反共=反コミュニズム>を掲げることに反対するために(つまり<容共>のために)、日本に固有・独自の歴史・文化を持ち出す持ち出すことはできない。上のことは何でも欧米の真似をせよ、という主張をしているのではない。
 民主党は全体としては又は多数派は<共産主義・社会主義志向ではない>という了解と安心があったからこそ、有権者の多くは同党に票を投じたのだろう。たしかに、米帝は日中人民共通の敵だと北京で声明した委員長がいたり、日米安保廃棄を唱えつづけてきたかつての日本社会党とは異なるようだ。
 だが、この政党に<旧社会党>一派がいることは周知のことだし、新総理大臣・鳩山がはたしてどこまで<反共=反コミュニズム>意識の持ち主であるかは疑わしい。むしろ<容共>に傾きうるのではないか、という危惧がある。
 こんな曖昧な政党に政治を委ねなければならないとは、憂鬱な事態だ。
 ドイツでは同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)の<保守・中道>連立政権が生まれそうだとされているが、かりにドイツで社会民主党(SPD)ほぼ単独の政権ができても、日本の新政権よりはマシなのではないか。ドイツ社会民主党の<反共=反コミュニズム>ははっきりしており、米国等との北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を主張するはずもないからだ(もっとも、独社民党はドイツ国内の米軍の核兵器の撤去を要求しているらしい。ということは、現時点で、ドイツには明確に米軍の核兵器がある、ということ、そしてそのことが広く知られている、ということだ)。
 一部であっても<隠れマルクス主義者>や<容共>の者が民主党内で力を持つとすれば、日本は由々しき状況になるだろう。
 かくのごとく、中国・北朝鮮の現況を前提とすると、日本での思想・政治の最も基本的な対立軸は、なお<容共>か<反共=反コミュニズム>だ、と考えている。
 多くのマスコミ人士や学者たちは、<民主主義(の徹底・充実)>か<古い(愛国的・保守的)思考(の存続)>かの対立だと捉えているように見える。こういう対立軸の設定は、<民主主義かファシズム(軍国主義)か>という、戦後昭和<進歩的文化人>、丸山真男らも描いた、戦後当初の思考枠組みをそのままなお引き摺る、じつはアンシャン・レジームの発想だ。
 決して万全の、理想的なイデオロギーでも何でもない(実現すべき実体的価値を何ら示さない)<民主主義>(国民の「皆様」が主人公!)の実現・充実・徹底、という「青い鳥」を<夢想>して、大多数の国民(・マスコミ人士・学者)はこれからも生きていくのだろうか。むろん、その先頭に朝日新聞や岩波書店や某大学等々の学者たちがいる。どこかが大きく間違っている。

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