秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

2017/12

1716/中西輝政はかなり異常②-西尾幹二との対談本。

 西尾幹二=中西輝政・日本の「世界史的立場」を取り戻す(祥伝社、2017)。第二章のp.106。
 西尾幹二がアメリカについて「絶え間なく戦争をする。今度も危ない」と発言したのを受けて、中西輝政はこう言う。
 「そこにこそアメリカという国の本質や生命力の根源がある。私はトランプ政権は戦争をする政権だと思います。ただ、米中でやるんだったら、できるだけ日本を巻きこまない形で、日本から離れたところでやってもらいたいですがね」。
 この中西の発言はいったい何だろうか。冗句・冗談だと理解したいが、それにしては明確に言い過ぎている。
 この中西発言は、<一国平和主義>あるいはアメリカが起こす戦争に日本が巻き込まれるという平和安全法制に対する日本共産党その他の日本の「左翼」の議論と、どこが違うのか。
 中西は2015年平和安全法制に反対せず、その前から日本の集団的自衛権の容認と行使(憲法解釈および法律上の)を主張してきたはずだが、<改説>でもするのか。
 特定の意味での日米同盟の実在は認知せざるをえないだろう。そしてまた、東アジアでの米中の実力・軍事衝突に、日本が「巻き込まれない」可能性があるとでも、中西は本当に考えているのだろうか。
 少しずつさかのぼる。まず、p.103-4。
 中西によると、欧と米は「根っこから違う」、アジア人のほうが、アメリカ的なものとの共通部分があるようにさえ思う」。 
 これはかなりの共通想念を覆すものだ。本当に中西の指摘のとおりだろうか。
 p.101。西尾幹二がアメリカにおけるトランプ当選の意味を何度か言及しているのをおそらく受けて、中西輝政は、こう言う。
 「ポリティカル・コレクトネス」的な「近年の偽善的なリベラリズムに彼は反撥しているのだ、という人がいますが、私の見るところ、それもたぶんトランプ一流の偽装」だろう。「宗教ポピュリズムの世俗版のような大衆運動を起こす」のが自己目的で、「それから、トランプ個人の権力欲、それ以上ののものは何もない」。
 「トランプ個人の権力欲」うんぬんは別として、この部分は、明言されていないが、西尾幹二の見解・理解との決定的な対立点だ。
 中西は他にも、トランプとクリントン、共和党と民主党との違いを無視するか相対化する発言をしきりに行っている。
 p.89で西尾は、いずれも「アメリカ=帝国」という意識はもつとしつつ、上の二つの差違を問題にしているが、p.90で、中西はこう言う。
 ・トランプについての「始めからの私の見方」は、「徹底した金持ち優遇の古いネオコンの、さらにより乱暴なバージョン」だ。
 ・メキシコ国境に壁、日本も核武装をは、「どちらも就任すれば、うやむやにしてしまう」だろう。
 ・「そもそも、トランプが勝とうと、ヒラリーが勝とうと、私には、もともとそんなことはたいして興味がなかった。…、いまのアメリカは孤立主義に行くしかないのです」。
 中西輝政の発言は櫻井よしこによるトランプに関する些末な言及よりは本質を衝こうとしているようで面白くて刺激にはなる。
 しかし、トランプとヒラリーの闘い、つまり共和党と民主党の戦いに「もともとそんなことはたいして興味がなかった」と言ってしまうのは、日本の「知識人」としてもやや異様だが、<保守>派論客を自認しているとすれば、かなり異常だろう。
 こんなふうに考えていると、現在のアメリカを理解できないだろう。
 もっとも、中西輝政はもっと高い次元で「世界史」的にアメリカを観ているのだ、と主張するのかもしれないが、それはそれでもよいとして、問題は、疑問は、そういう主張が、いまの現在、いまの日本で、いかほどの意味・意義を持ちうるのか、だ。
 なお、念のため。中西輝政はかなり異常だと評するのは、この対談本の読んだかぎりでの部分についてであり(その後も想像はつくが)、私の言う<保守>の立場の発言としては、という意味だ。

1715/日本会議の20年②と丘みどり「佐渡の夕笛」。

 横田めぐみさんが北朝鮮当局によって拉致(人さらい・人身の自由の侵害)から、今年10月で40年が経った。
 父の滋氏は日本銀行行員として新潟に赴任したはずで、転勤があったのだと思われる。あの転勤がなかったらとか転勤を固持してたいればとか等々の思いを、こ両親は何度も反芻されただろう。
 新潟でめぐみさんが特定されて狙われていたわけではなく、たまたま特定の地区・地域を彼女が通りかかったことで被害にあったのだろう。とすると、あの日に何とかしてあの地域・地区へ行かさないようにすればよかった、といった想いもまた、何度も想起されただろう。
 人生は、運命は、苛酷なものだ。もとより原始コミュニズム国家、実兄を公然と殺戮した首領がいる国家に責任はある。
 日本共産党は今は北朝鮮を<社会主義を目指している国>から除外しているが、かつては「友党」で、拉致についても疑惑の程度に応じた交渉をとか主張して拉致犯行者が北朝鮮国家であることを認めたがらなかったこと、北朝鮮はレーニン・スターリンのコミンテルンまたはロシア(ソ連)共産党の指導と援助で建設されたこと、金日成の指名も彼らによってなされたことは否定できないだろう。
 日本会議の20周年記念大会案内パンフの最終欄に、この20年間に<日本会議が取り組んだ主な国民運動」と題する26項が総括的に列挙されている。
 それらの中には、「北朝鮮拉致被害者救援国民運動」といったものは掲げられていない。
 西岡力等の日本会議関係者がこれに強く関与してはいるが、日本会議自体は、これを自らの団体の運動の実績の一つに挙げることをしない、あるいは、そうできないのだ。
 実績・成果がなかった・乏しかったことが理由にならないことは、選定・列挙されている26項を見ても分かる。
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 ところで最近にたまたま聴いた歌謡曲、丘みどり「佐渡の夕笛」の一番の歌詞は、横田めぐみさんの家族、とりわけご両親の滋・早紀江のお二人には、涙なくした聴けるものではないようにも思える。
 丘みどり「佐渡の夕笛」(2017)-作詞・仁井谷俊也/作曲・弦哲也。
 (一番)
  「荒海にあの人の船が消えて
  二とせ三とせと過ぎていく
  今年も浜辺に島桔梗
  咲いても迎えの文(恋文)はない
  待ちわびる切なさを
  佐渡の 佐渡の夕笛 届けてほしい」
もともとは船で他所に出かけた男を待つ女性の気持ちを歌った歌詞と曲だと思われるのだが、一番の歌詞だけは拉致被害者を、そして横田めぐみさんを連想させうる。
 佐渡島は、拉致されていく橫田めぐみさんを見ていたに違いない。
 「あの人の船が消えて」、「二年三年と過ぎていく」、「迎えの文はない」、「待ちわびる切なさ」、これらの言葉を、家族、とくにご両親はどういう想いで聴くだろう。
 丘みどり、1984年生まれ、2017年NHK紅白歌合戦初出場予定。
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