秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

2013/06

1183/<保守>論者は「左翼」民主党政権成立を許したことをどう反省し、自己批判しているのか。

 〇元首相・鳩山由紀夫が中国で妄言を吐いている。「棚上げ」で一致していたとかも言っているようだが、万が一そうだったとしても、尖閣諸島を「中核的利益」と正規に位置づけ、同諸島を自国領土とする法律を制定して、さらには「公船」をときどき侵入させたりして、そもそも「棚上げ」していないのは、中国(政府・共産党)自身ではないか。日本政府や日本のマスコミはなぜ、この点を指摘または強調しないのだろう。
 〇ずっと書きたくて書かなかったことだが、2009年8月末総選挙による翌月の民主党政権の成立を許し、鳩山首相を誕生させたことについての、<保守>論壇の側の深刻な反省と総括が必要だと思っている。安倍・自民党中心内閣が昨年末に誕生したからよいではないか、ということにはならない。
 いずれ繰り返すかもしれないが、この欄に当時に書いたように、例えば屋山太郎は明確に民主党政権誕生を歓迎し、外交・安保問題も心配することはないだろう旨を明確に発言していた。この屋山に影響を受けたか、櫻井よしこは、民主党内閣に<期待と不安が相半ば>する、と明言していた。選挙前において、櫻井よしこは、決して民主党に勝利させてはならないとは一言も主張していなかった。
 過去のことにのみ関係するわけではない。上はわずかの例だが、<保守>論者の現在および将来の主張が決して適切なものであるとは限らないことを、2009年総選挙前後の<保守>論壇の状況は示している。

 〇月刊WiLL7月号(ワック)で、渡部昇一はこんなことを(相変わらず)発言している。-「筋としては理想的な憲法を創り、国民に示して、天皇陛下に明治憲法への復帰(一分間でよい)と新しい憲法の発布をしていただく。…憲法の継承問題が起こらないから…」(p.55)。

 渡部昇一ら一部論者の現憲法無効・破棄論の「気分」は理解できないわけではない。但し、この欄で何度も書いたように、この議論はもはや貫徹できない。
 上の渡部発言にしても、誰が、いかなる機関が、いかなる手続によって「理想的な憲法を創り」出すのか、何ら論及していない。こんな議論がやすやすと通用するはずがない。またそもそも(確かめるのを厭うが)、渡部の主張は「国会」が無効・破棄宣言をする、というものではなかったか。
 天皇陛下に「お出ましいただく」とする点に新味があるのかもしれないが、現天皇に「新しい憲法発布の宣言」をしていただくという場合の「新しい憲法」を誰がどうやって創るかという問題に言及していないことは上記のとおりだし、現憲法は昭和天皇の名において「裁可し、公布せしめ」られたこと、今上天皇は皇位継承・即位に際して「日本国憲法にのっとり」と明確に述べられたこと、等との関係をどう整理しているのか、という基本的な疑問がある。

 <保守>論壇の中の大物らしく扱われている渡部昇一ですらこの程度なのだから、現在の日本の<保守>論壇のレベルは相当に低い(あえて言えば、論理の緻密さが足りず、某々のような「精神」論で済ませている者もいる)と感じざるをえない。

 そして再び上記のことに戻れば、「左翼」民主党政権成立をかつて許したことについて、各<保守>論者はどのように反省し、自己批判しているのかを厳しく問いたいところだ。

1182/敗戦国日本・日本人の歴史観・歴史認識は勝者が作った、という当たり前。

 〇橋下徹のいわゆる慰安婦発言に対するデーブ・スベクターの悪罵、広島等への原爆投下に対して罪悪感を何ら持っていないケヴィン・メアの発言等をテレビで観て、あらためて日本は「敗戦」国なのだと思う。
 戦争に負けただけならまだよいが、<道義的に間違ったことをした国家>というレッテルが付いたままなのだ。一方で連合国側、とくにアメリカは<正義はわれにあった>と考えているに違いない。
 そのような敗戦国日本に対してみれば、アメリカと中国は<反軍国主義日本>では共通する「歴史認識」をもつこととなり、中国共産党(戦後・1949年後の中国)は日本と戦ったわけではないにもかかわらず、中国はカイロ宣言・ボツダム宣言等より構想された<戦後秩序>をともに維持しようなどとアメリカに対して提言することとなっている。
 何とも奇妙で、苛立たしい構図だ。当然のことながら、<戦後レジームからの脱却>は戦後秩序の克服という基本的な方向性をもつもので、アメリカに対する自立、一種の<反米>構想でもある。「法の支配と民主主義」等の共通の価値観をもつというのは中国との関係では有効かもしれないが、かりに「法の支配と民主主義」等と言っても、日本と欧米とでまったく同じであるわけがない。
 おそらくは安倍晋三も、この辺りに存する微妙な部分を理解しているだろう。
 アメリカをむしろ「利用」しつつ中国(中国社会主義)と対峙し、自国の自立と強化(対アメリカ依存性を弱めること)を目指す必要がある。微妙な舵取りが必要な状況だ。今年になってはじめて生じた、などという問題・課題ではないが。
 〇「戦後秩序」と戦後日本人の「歴史認識」を形成したのはいったい何だったのか。後者については占領期の連合国軍総司令部(GHQ)の諸政策に起因することはよく知られている。基本的なことは知っていることだが、竹田恒泰の月刊ボイス5月号(PHP)からの連載「『日本が好き』といえる時代」はあらためて占領期のことを思い起こさせる。6月号の第二回めのタイトルは「百年殺しの刑にかけられた日本」。戦後まだ67年ともいえる。あと30数年、日本は「百年殺しの刑」にかけられたままなのか。そういう時代に生まれ、生きてきたことを、宿命的なことながら、何という不運なことだったのかと、うんざりとする感慨を持たざるをえない。
 だが、歴史観・歴史認識は変わりうるものでもある。江戸時代において関ヶ原の敵将・石田三成は奸賊の代表者として蔑視されたが、近親者は秘密裏にその墓を守り、供養し続けてきた、という。そして、石田三成の再評価もなされている、という。

 前の時代の歴史(歴史観・歴史認識)は勝者が作る、とよく言われる。いまの日本では、まだ勝者・とくにアメリカの歴史観・歴史認識が支配しているが(かつそれに迎合した「左翼」歴史学界もあるわけだが)、永遠につづくわけではなく、日本がみずからの「歴史」を取り戻す時代がきっとやってくるだろう。早いにこしたことはない。

ギャラリー
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