〇月刊正論2月号(産経新聞社)の中宮崇「保存版/政治家・テレビ人たちの尖閣・延坪仰天発言録―そんなに日本を中国の『自治区』にしたいですか」(p.184-191)に「仰天発言」をしたとされている者の名を資料的にメモしておく。

 田中康夫(新党日本)、福島瑞穂(社民党)、服部良一(社民党)、小林興起(民主党、元自民党)、田嶋陽子(元社民党)、大塚耕平仙石由人(民主党)、浅井信雄(TBSコメンテイター)、山口一臣(週刊朝日編集長)、三反園訓(テレビ朝日)、高野孟伊豆見元(静岡県立大学)、田岡俊次(朝日新聞)、金平茂紀(TBS)、NEWS23X(TBS)。
 なお、CNN(中国)東京支局は「テレビ朝日」と「提携関係」にあるが、この事実を記す「ウィキ」等のネット上の書き込みは「即座に削除隠ぺい」されてしまう、という(p.189)。
 〇隔月刊・表現者34号(ジョルダン、2011.01)の中で西部邁は、戦後日本人が「平和と民主」というイデオロギー(虚偽意識)で「隠蔽」した、その「自己瞞着の行き着く先」に「左翼のダラカン(堕落幹部)たち」による「民主党政権」が登場した、と書く(p.181)。
 戦後憲法体制の「行き着いた」果てが現民主党政権で、自民党→民主党への政権交代に戦後史上の大きな<断絶>はない、というのが私の理解で、西部邁もきっと同様だろう。だが、民主党政権は自民党のそれと異なり、明瞭な「左翼」政権だ。この旨も、西部邁は上で書いていると見られる。
 「左翼」政権といえば、櫻井よしこ週刊新潮12/23号(新潮社)の連載コラムの中で、「三島や福田の恐れた左翼政権はいま堂々と日本に君臨するのだ」と書いている(p.138)。
 はて、櫻井よしこはいつから現在の民主党政権を「左翼政権」と性格づけるようになったのだろうか?

 この欄で言及してきたが、①櫻井よしこは週刊ダイヤモンド11/27号で「菅政権と谷垣自民党」は「同根同類」と書いた。→ http://akiz-e.iza.ne.jp/blog/entry/1950116/

 自民党ではなくとも、少なくとも「谷垣自民党」は<左翼>だと理解しているのでないと、それと「同根同類」のはずの「いま堂々と日本に君臨する」菅政権を「左翼政権」とは称せないはずだ。では、はたしていかなる意味で、「谷垣自民党」は「左翼」なのか? 櫻井よしこはきちんと説明すべきだろう。
 ②昨年の総選挙の前の週刊ダイヤモンド(2009年)8/01号の連載コラムの冒頭で櫻井よしこは「8月30日の衆議院議員選挙で、民主党政権が誕生するだろう」とあっさり書いており、かつ、民主党批判、民主党に投票するなという呼びかけや民主党擁護のマスコミ批判の言葉は全くなかった。

 ③民主党・鳩山政権発足後の産経新聞10/08付で、櫻井よしこは、「鳩山政権に対しては、期待と懸念が相半ばする」と書いた。「期待と懸念」を半分ずつ持っている、としか読めない。

 ④今年に入って、月刊WiLL6月号(ワック)で、櫻井よしこは、こう書いていた。-「「自民党はなすべきことをなし得ずに、何十年間も過ごしてきました。……そこに登場した民主党でしたが、期待の裏切り方は驚くばかりです」。期待を持っていたからこそ裏切られるのであり、櫻井よしこは、やはり民主党政権に「期待」を持っていたことを明らかにしているのだ。→ http://akiz-e.iza.ne.jp/blog/entry/1603319/

 それが半年ほどたっての、「三島や福田の恐れた左翼政権はいま堂々と日本に君臨するのだ」という櫻井よしこ自身の言葉は、上の①~④とどのように整合的なのだろうか。
 Aもともとは「左翼」政権でなかった(期待がもてた)が菅政権になってから(?)「左翼」になった。あるいは、Bもともと民主党政権は鳩山政権も含めて「左翼」政権だったが、本質を(迂闊にも?)見ぬけなかった。
 上のいずれかの可能性が、櫻井よしこにはある。私には、後者(B)ではないか、と思える。

 さて、櫻井よしこに2010年の「正論大賞」が付与されたのは、櫻井よしこの「ぶれない姿と切れ味鋭い論調が正論大賞にふさわしいと評価された」かららしい(月刊正論2月号p.140)。

 櫻井よしこは、「ぶれて」いないのか? あるいは、今頃になってようやく民主党政権の「左翼」性を明言するとは、政治思想的感覚がいささか鈍いか、いささか誤っているのではないか? 

 厳しい書き方をしているが、櫻井よしこを全体として批判しているのではない。例えば、憲法改正(とくに九条2項削除)のための運動・闘いの先頭に立ってもらわなければならない人物の一人だと承知している。

 佐伯啓思に対しても、西尾幹二に対しても、西部邁に対しても、盲目的に従うつもりは全くない(それにもともとこれら三人の論調は同じではない)。<保守教条>主義者・論者であってはならないとの基本的立場は、櫻井よしこ等の他の<保守>論客に対しても、変わりはない。
 さらには、<保守>論壇・論客の中に、ひょっとして中国あるいは米国の<謀略>として送り込まれた人物もいるのではないか、くらいの警戒心をもって、<保守>系雑誌等の執筆者の文章や発言は読まれるべきであろうとすら考えている。