資料・史料-2007.07.12「参院選公示」朝日新聞社説
 
平成19年7月12日

 //朝日新聞社説
 「
参院選公示―「安倍政治」への審判だ

 きょう、参院選挙が公示される。昨年9月に就任した安倍首相にとって、初めて迎える大型国政選挙である。
 9カ月ほど前、自民党総裁選で大勝したころは、これほど厳しい逆風の下で初の審判を受けることになろうとは、予想もしなかっただろう。
 「宙に浮いたり、消えたり」の年金不信、閣僚に相次いで発覚した「政治とカネ」のスキャンダル、無神経な失言の連発。いわば「逆風3点セット」にきりきり舞いの状態が続くなかで、選挙戦に突入することになった。
 首相にとって、この選挙は小泉前首相の時代とは違う「安倍カラー」を前面に掲げ、有権者に問う場になるはずだった。そのためにこそ、国民投票法など対決色の強い法律を、採決強行を連発しながらどんどん通していった。
 教育再生や集団的自衛権の解釈などでいくつもの有識者会議をつくり、提言を急がせたりもしている。
 首相はテレビ局などを行脚して「この9カ月の実績を評価してほしい」と訴えている。だが、逆風3点セットに直撃され、「年金記録信任選挙」(民主党の小沢代表)の様相を呈しているのはさぞかし不本意なことだろう。
 むろん、年金の問題はこの選挙の大きな争点だ。国民の不信や怒りにどう応え、安心できる制度、組織をつくるかを論じる必要がある。
 だが同時に、この9カ月に安倍政治がやったこと、やらなかったことを、その手法も含めて有権者がしっかりと評価するのが、この選挙の重要な目的であることを忘れてはならない。
 小沢民主党にとっても、この参院選がもつ意味は極めて重い。2年前の郵政総選挙での屈辱的な大敗を帳消しにする絶好のチャンスだからだ。
 かりに参院で野党が過半数を押さえれば、政府・与党の法案を否決したり、審議の進め方を決めたりできる。いくら衆院で与党が多数を占めていても、与党主導の政治運営はできなくなる。
 参院選の結果で、すぐに自民党から民主党へ政権が移ることはないけれど、衆院解散・総選挙に追い込めれば、政権交代の大きな足がかりになりうる。政界再編という別の展開もあるかもしれない。
 小沢氏が「ここで負ければ政界引退」と退路を断ってみせたのも、長年追い求めてきた政権交代可能な二大政党制への天王山と思えばこそだろう。
 年金をはじめ、赤城農水相の事務所経費で再燃した「政治とカネ」の問題などの3点セットは、どれも大事なテーマである。公明や共産、社民も含め、論戦に注目しよう。そして、これからの日本の政治のあり方をめぐって重要な選択が問われていることを心にとめておこう。
 安倍政治がめざす「戦後レジームからの脱却」か、小沢民主党がめざす政権交代可能な二大政党制か――。投票日までの18日間、しっかりと目を凝らしたい。//

 *一言・二言コメント-社説だからこそこの程度の「安倍政治」批判で済ませていた。2007参院選民主党勝利→<ねじれ国会>→「衆院解散・総選挙」→「政権交代」という道筋をこの当時から想定(・目標設定)していたことが分かる。