朝日新聞の5/20社説は、同紙の<中国観>を垣間見せており、その点でそれなりの意味がある。
 いわゆる「価値観議連」の古屋圭司会長は、こう述べた。「首相の日中首脳会談には大きな成果があった。しかし一方では、軍事費増大など覇権拡張の疑念は払拭できない。中国は共通の価値観を持つ国ではない」。
 また、同議連の会合で講演した中川昭一・自民党政調会長はこう述べた。「中国は我々に一番近くて脅威の国だ。我々が中国の一つの省になることは絶対に避けないといけない」。
 これらに全く問題はない、と私は思う。
 しかし、朝日社説は、上の二つの発言を紹介したのち、こう書く。「日中外交がようやく軌道に乗り始めているときに、何とも刺激的な中国警戒論ではないか。
 まず第一に、上の発言内容に問題はなく、これを「
何とも刺激的な中国警戒論」として批判し、封印しようとするのは、中国に対しては正しいことも言うな、言いたいことも言うなに等しい。こうした姿勢は、かつて中国の文革時代に朝日新聞社自身が採ったものだった。今でも当時の朝日の中国関係報道記事の歪み(媚中・屈中姿勢)を批判する声は大きい。だが、基本的な部分では朝日は依然として変わっていないのだろう。
 中国の軍事費増強に懸念を示してどこがいけないのか。従ってまた、「一番近くて脅威の国」との感じ方は決して異常ではなく、日本が
「中国の一つの省になる」のを絶対に避けるべきとの発言は至極当然のことだ。
 第二に、朝日社説には、「日中外交がようやく軌道に乗り始めているとき」
だからいけない、とのニュアンスがある。
 何を寝ぼけているのだろう。私は、「日中外交が軌道に乗る」ということは
中国が共産党支配の国であるかぎのたぶんありえないことだと考えている。「日中外交が軌道に乗る」ということの意味の問題でもあろうが、近隣国家としての儀礼的なつきあいはあるだろうし、それを続けるべきだとしても、真に友好的な「外交」が、共産党支配の中国との間で成立する筈がない。
 中国もまた本音では、私と同じように考えている筈だ。
 「社会主義」中国と真に仲良くできると朝日は考えているとすれば、まだ幼児の如く、「社会主義」国の怖さ、共産党の怖さを知らない。積極的に「社会主義」中国と真に仲良くすべきだと考えているとすれば、それは中国の言いなりになれと主張しているのと等しく、かつ、いまだに「社会主義」幻想を捨てていないマルクス主義(毛沢東主義?)者の如き発想だ、と思う。