中川八洋・保守主義の哲学(PHP、2004)p.384で表示されている「日本を益する自由擁護の保守主義系の思想家たち」計30名は、つぎのとおりだ。
 ベスト4(没年順)-コーク、バーク、ハミルトン、ハイエク
 その他26(没年順)-ヘイル、マンドヴィル、ヒューム、ブラックストーン、アダム・スミス、ファーガソン、J・アダムス、マディソン、トクヴィル、サヴィニー、バジョット、ディズレーリ、ドストエフスキー、メイン、ブルクハルト、アクトン、ル=ボン、バビット、ホイジンガ、ベルジャーエフ、オルテガ、チャーチル、ドーソン、ハンナ・アーレント、オークショット、カール・ポパー、サッチャー。
 「日本を害する…」に比べて、名前に馴染みのない人が多い(これも、中川によると日本の学界・出版界・教育界に原因がある)。また、作家のドストエフスキー、むしろ政治家のチャーチルやサッチャーを挙げないと30名にならないのが中川の苦労したところだろう(バークも18世紀英国の国会議員だが)。
 ベスト5だと、言及頻度からして、トクヴィル(仏)が入ってくるのではなかろうか。
 中川によると、ロシア革命前に没してはいるが、ドストエフスキーは、レーニン・スターリンの社会主義体制の到来を最も早く予知したロシア知識人で、小説・地下生活者の手記は「反・社会主義宣言」だった。この小説で彼は、自らを「地下生活者」としつつ、地上に立つ透明な「水晶宮」を「内証で舌を出して見せたり、袖のかげでそっと赤んべをしたり、そんな真似のできない」、「個人をガラスごしに二十四時間監視し統制する社会」だと喝破していた、という(p.257-8)。余裕があれば、数十年前に少し手にしたことのあるドストエフスキーの本を反共産主義という観点から読み直してみたいものだ。