奇妙で不思議なことはあるものだ。「桜を見る会」問題から
  ①「内閣総理大臣・安倍晋三」の名で招待状を発送しておきながら、<最終的なとりまとめには関与していません>という釈明が可能であるはずはないだろう。
 安倍晋三なのか内閣府か等の問題は、いわば「内部」問題で、主催者・招待者が内閣総理大臣・安倍晋三であるかぎり、安倍に全面的な「責任」の所在があることは当たり前のことだろう。組織・機関・個人(政治家個人)の意識的な混同でもって逃げているのだろう。
 ②野党議員または国会による招待者名簿の公開または提出要求に対する、<個人情報>だからという理由づけは、むちゃくちゃで、一体誰が考えだしたのか。
 <個人情報>該当性を理由にして提出・公開ができないとすれば、<春・秋の叙勲>者たちの氏名は、どうして新聞にも細かく出て報道されるのだろうか。内閣府褒賞局が、データ(名簿一覧)を積極的にマスコミに提供しているからだろう。
 しかも、現在の<叙勲>は「数字による等級づけ」はしなくなっているのかもしれないが(未確認)、何がしかの分類・評価づけはしているだろう。そのような情報提供によって他者と比べての不満・不快感を中には感じる人もいるだろうが、全員から、新聞発表についての個別の「同意」を得ているのか。
 ③さらによく分からないのは、行政機関情報公開法を引き合いに出して、一方では開示請求の対象となる「行政文書」性がないとかの議論をしながら、同情報公開法には<個人情報であれば全て開示しないことができる(開示してはならない)> という旨の規定など、どこにもないということだ。開示することによる「公益」と比較考量をすることを前提としている。要するに、<個人情報>だからというだけでは、公開しない<天下の御旗>には全くならない。
 一方で法律を細かく解釈するようなことをしながら、一方ではズルズルだ。このアンバランスは不思議でしようがない。
 <現用組織共用文書>ではない旨の、法律上は唱え得る主張も、苦しい。存在しているかぎりは、実際上アクセス可能者が限られるとしても、<現用組織共用文書>ではあって、「行政文書」だろう。もっとも、「存在しない」となると、かつそれが事実だとすると、どうしようもないかもしれない。
 存在してはじめて、開示請求の対象になる。しかし、「存在する」ことの立証・証明は申し立て側に、強制的立入・調査権でも認めないと、ほぼ困難だ。
 ④ついでに書くと、国会・野党議員の<提出・公開>要求への応じ方を、行政機関情報公開法の条項を手がかりとして論じる、というのにも違和感が残る。
 国民による法的請求に対する対応の仕方と国会に対する政治的・行政的対応の仕方は、同じである必要はないのでないか。つまり、例えば、「個人情報」の観点から問題があるというならば、一部については国会議員は自分たちだけの「秘密」にして、マスコミには氏名等々は発表しないということもあり得るだろう。

 安倍晋三首相が早々に来年度の「桜を見る会」中止を決定し、選考基準等の「見直し」・「改革」をすると発表した。
 面白いと思うのは、<今後、改革する>と強調することによって、現に発生している、または発生した問題の「責任」の所在・問題点を可能なかぎり不問にしようとしていることだ。
 こういう対応の仕方は、消費者から正当なクレームを受けた民間企業でもあるだろうが、国や地方公共団体(地方自治体)の通常の行政の過程でもある。
 問題の所在が指摘されたとき、いったい誰のどういう言動に問題があったかを特定して説明することなく、ともかくも「詫びて」、場合によっては「深く頭を下げる挙措」を芝居がかってすることによって「詫びて」、それで過去の問題はなくなったことにする。
 あとは「今後の問題」で、ときには、改革する、改善するとすでにたくさん言ったではないか、それ以上の何の文句があるのか!と<逆ギレ>して、問題提起者とケンカしようとする。
 繰り返せば、いったい誰のどういう言動に問題があったかを曖昧にし、そのような関係関係公務員にはどういう<責任>を取らせるのかを全く曖昧にしたままでだ。
 このようなことが、今回の安倍晋三首相・内閣府関係でも行われているようで、すこぶる興味深い。

  「桜を見る会」問題に関連して、JBpress のサイト上で、伊東乾は厳しい立場に立つ。
 2019.11.22付「民主主義を知らない『桜を見る会』擁護者」-「現在の内閣が本件を契機に終焉を告げる可能性が高いと思います」。
 2019.12.03付「ついに疑獄へ発展『桜を見る会』」-「実際、進んでも退いてもこの政権はもたないことが、いまやまともにものを見る大人の目には明らかで、…事態はいまや『桜を見る会』疑獄事件と呼ぶべき段階に到達してしまいました」。
 2019.12.05付「なぜ官僚は嘘の見え透いた言い訳に終始するのか?」。
 郷原信郎によると、安倍首相は<もう詰んだ>らしい→2019.11.28 付/HUFFPOST。
 こうした意見が公にされるのはよいことだ。
 それにしても、伊東乾は物理学と音楽が専門とは。パリのノートルダム寺院の構造が音響・音楽に関係していたとかのかなり前の話題提供には驚き、感心した。また別の機会に。