中西輝政・歴史通2016年5月号(ワック)。
 「保身、迎合、付和雷同という現代日本を覆う心象風景は、保守陣営にも確実に及んでいる」。
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 「共産主義は当時からアジアの平和をかき乱す最大の要因だったわけです。それをなぜ、懇談会報告書は無視したのか」。「中国共産党への迎合ではないか」。p.75。
 「歴史問題には、戦後日本が抱え続けてきた『闇』が伏在しているように思えてな」らない。p.76。
 「ロシア革命の1917年ごろから、日本は共産主義の悪しき影響を受け続けてきた」。p.77。
 「戦後日本の政治経済のエスタブリッシュメントが日米関係を最重視する特定の歴史観を『オーソドクシーとして動かさないぞ』という、非常に強い意志がある…」。p.78。
 以上、中西輝政・月刊正論2015年11月号(産経)。
 「20世紀は、四つの大きなイデオロギーに支配された世紀でした」。①ファシズム、②共産主義、③「白人文明覇権思想」、④「アジア主義」。日本の④が「イデオロギーとしては最も貧弱」。20世紀はあとの三つ、「つまり西欧が創り出したイデオロギーによって攪拌された」。p.83。
 「それらの根はただ一つ、フランス革命に端を発して」おり、「アメリカのフェデラリズム」と「ソビエトの革命思想」に流れるものの二つがあった。「それに対するアンチ・フランス革命の思想としてナチズムが生まれた」。p.83。
 「そういう思想どうしの戦い」、「 いわば西洋の『内戦』に日本は否応なく参戦させられた」。中国も「参戦」した。中国は共産主義の側に立ち、日本は「欧米帝国主義に最も近いようでいて、実際にはどれにも属さない形で、西洋の価値観との争いのボーダー上のに自らを置いて歴史を刻んできた」。p.84。
 20世紀の日本には「この三つのイデオロギーが全て入ってき」たが、「どのいずれにも徹底的に属することはしなかった」。常に「どこにも所属しない孤独の中にあった」が、「そういう自己像を、当の日本人自身が把握しきれていない。そこに今日の混乱の根がある」。
 以上、西尾幹二・月刊正論2015年11月号(産経)。
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 少しばかりのコメント。①中西輝政のいう「戦後日本の政治経済のエスタブリッシュメント」なるものがきわめて気になる。読売新聞社も、産経新聞社(フジ・産経グループ)もその中に入っているのではないか。
 ②西尾幹二の歴史把握は鋭いだろうが、分類・系統化に全て賛同するものではない。